メルファ・人形残酷(?)物語-4
「奥様、受取書にサインをお願いします」
提示された書類にサインをするマルシア。
「業務の方はどうかしら? 結構、忙しいの?」
「お陰様で。いつも、バタバタですよ」
「結構な事じゃない。
人形を買ってくれる人が多いって事は」
「奥様の方は、お体の具合は如何ですか?」
「随分と良くなったわ。 あの薬は結構、効くみたいネェ?」
「でしょう? 国で一番、解毒力の強い薬草が原料として使われているんですよ」
この時…
「ウィアーンッ! ウィアーンッ! ミャミャーッ! ミャミャーッ!」
車の中から子供の泣き声がして来た。
「おやおや? まだァ、中に1人残っていましたなァ?」
ブラッドベリーはすぐに車の中を覗いてみる。
ハハァ、やっぱり…
中で可愛い子供人形が1体、足をバタバタさせながら泣き喚いている。
どうやら、他のみんなに遅れてしまって1人、置いてぼりになったのかもしれない。
笑いながら、ブラッドベリーはその子を抱き上げた。
「ウィアーンアーンアーンッ!! ウィアンッ!! ウィアンッ!! ウィアンッ!!」
顔をクシャクシャにして泣く泣く。
「まあ、イイ泣きっぷりだわ」
「名前はレレ。30体ある人形の中の、甘えっ子さんの1体ですよ」
「まあ、そうなの。
それにしてもこの子、よく泣くわネェ。
大丈夫なのかしら?」
「大丈夫大丈夫。よく泣くって事は、元気な証拠だと言う事なんですよ」
マルシアもブラッドベリーも思わず、ほがらかな気持ちになった。
「では奥様、私はこれで失礼します」
そう言って、ブラッドベリーは泣き虫レレをマルシアに託した。
「ご苦労様」
泣き続けるレレを抱いてあやしはじめるマルシア。
「奥様がちゃんと、ママの所へ連れて行ってあげるから安心するんだよ」
ブラッドベリーはそう話しかけて、レレの頭を撫でた。
後片付けを済ませ、屋敷を後にする。