ラブホーム-娘--4
「もういいよ、大地。ガンタンあるし、大丈夫。一個しかないから、明日またガンタン買ってくるよ」
「だな。ガンタン、買っとけ」
ガンタンガンタンってわざと?
あのね、ガンタンじゃないよ!眼帯だよ!
ああ、教えてあげたい!このアホな両親がこれ以上アホをさらけ出す前に、教えてあげたい!!
「ガン…タイ」
「あれ。大地、あっくが何か喋ってるよ?」
「どうしたー、あっく?」
「…眼帯」
「…」
「……」
「大地、アタシ思ったんだけどさ」
「俺も思ったことあるわ」
「ガンタンじゃないよね」
「おう、眼帯だな」
…つ、伝わった!
「ていうかあっくが初めてちゃんと喋った」
「喋ったね」
はぁ〜、一安心だよぉ。
私、初めて会話した。会話出来るって嬉しい!
「ぬおぉーー!あっくがあぁーー!」
「あっくが喋ったあぁー!」
ヒイィ!?二人して躍り狂っている!
一人感動に浸っている場合じゃない。
でも…私が喋ったのそんなに嬉しかったんだ。
「あ、大地ぃ、見て見て」
「ん?」
父と母は並んで座って、私を覗き込んだ。
さっきまであんなに怒鳴ってたのに。
「あっくが笑ってる〜」
「本当だ、珍しい。人様の前ではよく笑うのに、俺らの前じゃ笑わねんだもんな」
失礼な。
だって父と母の子供だもん。私がしっかりしなきゃじゃん。
お腹の中でも、外に出てからも、二人の会話を聞いてれば、いやでもこんな性格になっちゃうよ。
「あんね〜大地」
「ん?」
「アタシね、しゃ〜わせ…」
母はこてんと父の肩に頭をもたげた。
そんな母の頭を包み込むように、父はポンポンと撫でる。
「しゃ〜わせ、だな」
見事に反面教師な父と母。
こんな風にはなりたくないと思う一方で、こんな風になりたいと強く願っている。
父は極度に感情豊かな母が手に負えないようでも、可愛くて仕方がないようだ。母も母で、父に何だかんだ言いながら、顔はしっかり笑顔なことが多い。
そんな二人の元に運悪くやってきてしまった私も、やっぱりしゃ〜わせなのだ。
end.