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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-52

「俺はキスしたんだ。里美さんとキスしたんだ!」

 鏡に向って語る紀夫。シャワーの勢いを上げて言葉を消す。

「きっと、俺も、彼女も! 好きなんだ。お互い……」

 雷雨に似た水音に半比例して小さくなる声。
 まだ信じられない。
 そんな弱さがあるから……、ここへ来たのかもしれない。

**

 シャワーから紀夫が出ると、久恵は布団を頭から被っていた。
 もうこんなお遊びはおしまいと伝えるため、紀夫は一度唾を飲み、心を落ち着け、
そしてそっと手を添える。

「先輩、帰りましょう。僕……俺達、ここで一緒にいるべきじゃないし……」
「やっぱり……」

 か細い声が聞こえてくる。震えているのかもしれない。それはつまり泣いているの
かもしれない。

「なんです?」
「やっぱり、里美ちゃん?」

 また……なのだろうか? それとも今更なのかもしれない。

 恋に気付けなかったのは自分だけ。

 ――はい……。

 迷いは無い。
 だから口を開けばもうすぐ、自然に言える。相手が久恵でも、紅葉でも美奈子でも
綾でも理恵でさえ……。

「……ッ!?」

 声が出ない。
 シャワーを浴びたばかりだどいうのに、乾いた口腔内がくっ付きあって痛みを感じ
てしまうほど。身体も熱くなり、拭いたあとから汗が涌き出る。
 久恵は布団に包まったまま震えていない。
 きっと彼女は自分の続く言葉を待っている。
 このおかしな夜遊びを終わらせるセツナイ言葉を。

「……どうしたの?」
「そ……れ……が……」
「う、う、う……」
「その、喉が渇いて……」
「そんなに……私が嫌?」
「そうじゃなくて……だから……」

 冷蔵庫を開けて適当に一本取り出す。そこにはエールの文字があるが、この際気に
しない。

「ンゴク、ゴクッ……」

 炭酸のそれは清々しい香りで喉を潤し、ひとときの安心をくれる。
 けれど、布団に包まる彼女の肩の辺りが小刻みに震えると、それもすぐに消し飛
ぶ。

「俺は……」
「う、う、う……うふふ、あはは! あっはっはっ!」

 次の瞬間飛び出してきたのは、顔を真っ赤にしてお腹を抱えて笑う久恵だった…
…。

 突然の爆笑に言葉を失う紀夫。けれど久恵はベッドをバンバンと叩き、堪える様子
が無い。


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