投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

……タイッ!?
【学園物 官能小説】

……タイッ!?の最初へ ……タイッ!? 140 ……タイッ!? 142 ……タイッ!?の最後へ

……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-49

**

「こっち、こっちだよ!」
「はい!」
「ここを右で、あっちを左……」

 裏道をこそこそとうろつく二人は徐々に人波からはずれ、寂しい路地へと紛れ込
む。
 その頃には警官らしき二人組みの姿も見えなくなっており、煌びやかなネオンが陰
を潜め、代わりにピンクや紫の妖艶な雰囲気が目立ち始めていた。

「先輩、ここって……」

 目に飛び込む看板には休憩、宿泊などといっしょに料金が書かれているが、それら
はけしてビジネスホテルのものではない。さらに言うと先ほどからすれ違うカップル
はどこか後ろめたそうで、彼らを見つけるやいなや野良猫同士が十字路ですれ違うよ
うに身体ごと視線をそむけていた。

「あ……ちょっとあれ……」

 いきなり物陰に隠れる久恵は戸惑う紀夫の裾を引っ張り、少し歯馴れた場所にある
建物を指差す。
 特に飾った風でもない建物には例によって例のごとく休憩いくらの看板があるが、
久恵が気にしているのは別にあるらしく、入り口近くにいる男女を指差す。

「あれ、井口先生じゃない?」
「井口?」
「君は知らない? ウチの学校の現国の……」
「ああ……」

 紀夫は四月ごろの教員紹介で見た神経質そうな眼鏡の長身の男性教員を思い出す。
 授業の運びかたはこれといって分かりやすいほどでもないが、たまに冗談とも分か
らない一言が、クラスに笑いと誤解を醸していたのを覚えている。

「あ、あれ?」

 彼がラブホテルの入り口にいたとして、それは問題ではない。成人男性の正常な欲
求と一人住まいの窮屈さからすれば当然の行為。
 けれど隣にいる女子が問題だった。
 縞模様のプリーツスカートに半そでブラウスはついこないだまで毎日見ていたも
の。それに身を包むセミロングの女子こそ知らないものの、相手は相模原の……。

「あの子、相沢……さん?」

 久恵は面識があるのか眉間に皺を寄せながら目を細めているが、彼女は振り返るこ
となく建物の中へと消える。
 井口は一人腕を組んで考えていたようだが、寄り添うカップルを一組送ったあと、
建物に消えた。

「……ゴクリ……ッ」

 喉を鳴らして唾を飲み込む。
 八月半ばの暑さにして口の中はからからのはずが、卑猥な驚きと下世話な好奇心が
粘液質な唾液を促し、二人の口腔内を不愉快にさせた。


……タイッ!?の最初へ ……タイッ!? 140 ……タイッ!? 142 ……タイッ!?の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前