……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-4
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「さあ、召し上がれ」
テーブルに並べられたのはご飯と味噌汁、それにハムエッグとキャベツの千切り。
ほかに形が崩れてはいるものの肉じゃががおいしそうに湯気をたてていた。
「へえ、理恵さん結構がんばるね」
「うん。煮物は得意なの」
それならお弁当の一件もと思う紀夫だが、汁物をタッパーに入れたところで悲劇に
しかならないと口をつぐむ。
けれどそれはジャガイモ一口食べることで考え直させられた。
「美味しい!」
二日目だからだろうか味の染み込んだジャガイモは口の中でホクホクと崩れ、豚肉
のだしと若干の甘み、しょうゆの素朴な味わいがあった。
「でしょ? あたしね、煮物とか焼き物は自信あるんだよ」
この前のお好み焼き屋のときもそうだった。三人とも同じ生地を与えられているは
ずなのに、彼女のが一番ふっくらと仕上がり、生焼けなどという失点もなかった。
そこを聞くと「経験の差」と笑われたが、確かにそうなのかもしれない。
「でもキャベツはちょっとね」
箸で拾うキャベツは切れ目があるも玉すだれのよう。どうやら包丁は得意でないら
しい。
「以外だな、理恵さんにこんな特技があったなんて」
白いごはんに目玉焼きを乗せる。半熟の黄身にしょうゆを合わせ、そのままかき込
む様に食べる紀夫。
「これぐらい当然よ。っていうか、前の洗濯機のときは自分で洗濯してたし」
少し不機嫌になる彼女は挑むようにして紀夫を見て、途中なにかに気付いたのか頬
に指を伸ばす。
「?」
「ごはん粒……んふ、ノリチンの味がする」
理恵は紀夫の頬に付いたごはん粒を口に運ぶと、両頬に手を当てて身をくねらせ
る。
「理恵さん、からかわないでよ」
どこか新婚夫婦の朝の甘い関係を演出しようとする理恵にあざとさを感じながら、
それでも胸に訪れるのは、帰り道に彼女を抱きしめたときと同じ、心地よい息苦しさ。
そのせいか紀夫は食べ終わるまで一言も口をきけず、理恵も目を伏せてばかりいた。
「ご馳走様」
手を合わせてご馳走様。そのあとは仲良くお片づけ。理恵が茶碗を重ね、紀夫が運ぶ。それだけの動作。