……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-2
「ねえ……」
「何?」
けれどそれは唇を尖らせた里美によって打ち砕かれる。
「綾をどうやって説得? したの」
「えと、綾さん、ちょっと男のことで悩んでたんだって」
悩み事を軽々しく話すのはマナー違反。けれど下手に隠して勘ぐられても困る。だ
から一握りだけ。
「ふーん、君が男のことをねえ……」
「いや、あくまでも一般論だよ。その、気にしだしたらキリがないっていう感じの悩
み」
「ふーん」
つまらなそうに頷く里美はどこか上の空。もしかしたら綾の変遷もそう気にしてお
らず、ただ話のきっかけがほしかっただけなのかもしれない。
「ねえ、里美さんは……」
「あんたは悩みって無いの?」
だから自然と言葉が出た。
二人とも。
「え? 俺の? 里美さん、聞いてくれるの?」
「いや、別に。ただあるのかな〜って思ってさ」
そしてまた目を伏せる。
「悩みか……俺の場合、そんなにないかも」
「そう? あたしはあるかも……」
視線の端にバスが映る。低い振動音を響かせながら徐々に近づいてくるそれが、急
に邪魔に思えてくる。
「なにかな?」
「うん。それはね……」
目の前に止まる市営バス。ドアが開いても乗ろうとしない里美を避けてサラリーマ
ンが先を行く。
「君のこと」
「え?」
軽く胸が痛む。
そんな朝の出来事……。
**――**
「で、サトミンと何話してたの?」
帰り道、理恵は屈託の無い笑顔でそう切り出した。
気を利かせて二人きりにしたハズの彼女からいわれるのは予想外だったが、そうい
う話が気になる年頃。
「別に。大した話はしてないよ」
「あー、なんか格好つけてる。あやしいんだ!」
けらけらと笑う彼女は里美と違って素直で可愛らしい。
なのに紀夫はどこか上の空。
去り際に残された「君のこと」。
ただそれだけなのに、どうしても耳に、心に残る。
これならいつものように「エッチなことしちゃダメよ?」といわれたほうがまし。
これから十日間、場合によっては彼女から明確な答えが聞けるまで続くのでは気持
ちが焦るばかり……。
とはいえ燻るのは何故?
「もう、ノリチンのムッツリスケベ……」
反応が芳しくないことにいらだった理恵はぶーと呟くも、彼の周りから離れようと
しない。それどころか誘惑するように腕をとり、暑苦しいのもお構い無しに擦り寄っ
てくる。