……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-18
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ソファに一人腰を下ろす紀夫。
テーブルには久恵の飲んだコップがあり、たまにカランと音を立てては甘い香りを
放っていた。
――美味しいのかな?
好奇心は猫も殺す。
――飲んでみたいかも?
未成年の飲酒傾向は深刻なもの。
――別に大丈夫だよな? 水で割ってあるんだし……。
グラスを取り、舌先を伸ばし、一滴を舐める……。
「苦!?」
慌てて舌を引っ込めて顔ごとグラスから背ける紀夫。
彼が期待していたのは甘い香りのそれ。だが、褐色の液体は舌をびりびりと痺れさ
せる苦味と咽るような飲み難さ。
子供の頃に父親の飲み残したビールを舐めたことを思い出したが、それとそう遠く
ない経験。そもそもどちらも同じアルコール、お酒なのだ。
「こんなの飲めないよ……」
がっかりした彼はお茶で喉を潤すことにする。
同じ苦いものでもなぜお茶は平気でお酒はダメなのか?
それはまだ自分が子供だからといい訳する。
――そうだよな、俺ってまだ子供……、でも期待してしまうのか……。
もう一つの期待。最近覚え始め、のめりこみそうで怖い、いけない遊び。
――久恵先輩……。
頭の中に怪しげな霧がかかる。
――マネージャー君……か。
コメカミのあたりが疼く。お酒の匂いを嗅いでいたせいだろうか? 蒸発分の影響
かもしれない。
――違うよ。だって、言い方が似てるから、また思い出した。
つい二日前のこと。たった一言の縛り文句。
――ズルイ。
三度目の氷の音に紀夫はグラスを一気に煽り、飲み込む。
喉をかける灼熱はずいぶんと氷に薄められており、苦味の奥に甘みが見えた。
――美味しいのかな? もしかして……。
グラスをゆっくりと置きながら、少し手が震えたのが怖かった。
褐色の瓶はまだ少しある。
だが手は伸ばさない。
自分は節制が利かないほう。だからやめておく。それも勇気。退く勇気。だと言い
聞かせて。
――先輩、遅いな……。
お酒はまだ触れた程度。だがもう一つは……?