……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-14
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「何がパパとママよ。マネージャーは言ってて恥ずかしくないの?」
路地裏を追い出された久恵はつまらなそうに吐き捨てる。仲間というべき存在から
見捨てられる格好になった彼女は不機嫌そのもので、先ほどから一度も紀夫のほうを
見ない。
「それが最善手だと思いましたから……」
「そうね、その通りだわ。君のせいでせっかくの友達がいなくなったわ」
「すみません……」
「せっかく楽しかったのに、いい気分でいれたのに……」
横顔はやや赤い。おそらくはアルコールのせい。
紀夫は酒の類を飲んだことが無いが、酔っ払いは家でもなんどか見ている。
久恵は特に真面目というわけではないのを知っている。部室での行為を見ていたせ
いか、今回のこともそれほどショックはない。
「先輩、もしこんなことばれたら……」
ただ、マネージャーという立場の彼には一大事。
「そうね、停学かもね」
急ぐ彼女だが、脚をたまに引きずっているのが見える。
「部活は……」
「まあ、活動自粛かもね」
「ふざけないでください!」
「ふざけるって……私が? それとも部員が?」
ようやく振り返った彼女は挑むように彼を見る。
「どういう意味ですか?」
「そのままじゃない? 陸上部の皆だって真面目にやってると思う? 結局陸上なん
て個人技じゃない」
睨むようにこちらを見る彼女から初めて怒りが見える。
「私も別に真面目になんかやるつもりないし、だから今日だって遊びたいしさ」
「帰りましょうよ。足、捻ってるでしょ。痛そうです……」
「うるさいわね。いつまで着いてくるの? アンタストーカー? きもちわるいわ
ね!」
立ち止まる彼女は言葉だけで紀夫を拒絶する。
攻撃し、どうにかして撃退しようとしているのが見て分かるが、それはまるで毛を
逆立てて自分を大きく見せようとする野良猫の威勢。
「ヒールなんて履くから……」
逃げられないことを見抜いた紀夫は久恵に近づき、自転車に乗るように荷台を向け
る。
「馬鹿じゃない、そういう恋愛ごっこは他の子とやれば?」
「なんといわれようと先輩を放って置けません。先輩がどこにいこうとも、絶対に邪
魔します」
ゆっくりと諭すように言う紀夫にはそれなりの迫力もあったのかもしれない。それ
ともただ足が痛かったのか、久恵は荷台に乗り、つまらなそうに足をぶらぶらさせる。