declare oneself-3
「だからだよ・・・。」
いつもと違う、真剣な低い声。
ゆっくりこちらを振り返るとそのままこちらに近づいてきた。
だからだよ・・・?
その言葉の真意を理解しようと考えていると視界が暗くなり、
あたしは愁ちゃんに抱き締められていた。
「え・・・?あ・・・?」
何かを返そうとするのに、上手く言葉にならない。
「・・・卒業するまでは、待てないか?」
頭の直ぐ上から切ない声が降ってくる。
更にぎゅっ、と抱き締められた。
「大切に・・・思ってる。」
「・・・。」
まさか抱きしめられるとは思ってもみなかったあたしは思考能
力が停止する。
「俺の・・・正直な今の気持ちだ。」
鼓膜の奥で自分の心音がバクバクしているのがわかる。
「それは・・・卒業して、生徒じゃなくなったら付き合ってく
れるってこと?・・・あたしは、期待してもいいの?」
愁ちゃんの瞳に問いかける。
「・・・俺の気持ちは変わらない。でも、宮原は・・・。」
そこまで言って言葉に詰まっている。
肯定も否定もしない返事。
こんなに思っているのに、所詮子供の恋だと愁ちゃんは勘繰っ
ているのだろうか?
一時的な気持ちだと。
少しして、抱きしめられた手が離された。
「待ってるから。」
何も答えないあたしを悩んでいる、と取ったのか少し寂しそう
に微笑んで体が遠ざかる。
「・・・あたしだって、この気持ちは変わらないからっ。本気
だからっ。」
触れていた部分が急に寒くなって・・・今自分の気持ちを伝え
ないと愁ちゃんが離れて行ってしまう気がして・・・。
「ぷっ・・・。」
突然、愁ちゃんが吹き出す。
「へ・・・?」
なぜ笑われたのか分からずきょとんとした顔で見上げる。
「お前・・・ほんっとすごい勢いだな。」
頭をよしよし、と撫でられた。
「なんでそうやって・・・っ。」
誤魔化したり、子供扱いしたりするのか。
「冗談だ。」
にっこり笑って頭を撫でていた右手をあたしの左頬に滑らせ
「信じてるよ。」
そう言っておでこにキスをした。
〜FIN〜