declare oneself-2
「ほら、帰るぞ。」
校門で待っていると呼ばれた。
ほんと、何事も無かったかのように接してくれちゃって。
「はぁい。」
それに甘えて1人の生徒をしているあたし。
胸がきゅっ、と痛む。
実はあたしは2度愁ちゃんに告白し、玉砕している。
1度目は1年生の冬だった。
愁ちゃんにとって、大勢の中の生徒の1人にすぎなかったし、
なによりあたしのことを知っていたかも定かでない時だった。
勇気を出して告白したのだけど、愁ちゃんは一瞬目を見開いて
驚いた後
「ありがとう。嬉しいよ。」
にっこり笑ってさっさと職員室に帰って行った。
余りにあっさりしていた為、冗談として取られたのかとあたし
は3日間落ち込んだ。
それから、なるべく愁ちゃんに話しかけたりしてなるべく自分
の存在をアピールしていたところに、クラスの副担任の話。
2度目の告白は、夏休みの前。
煮詰まったあたしは、長期休みに入る前に決着をつけようと帰
り道に待ち伏せをして告白をした。
しかし返ってきたのは
「生徒からそんなに思われるなんて、教師冥利に尽きるなぁ。
」
の一言だった。
ショックで固まるあたしを置いて、愁ちゃんはとっとと帰宅。
その時は1週間落ち込んでいた。
先生と生徒ーーー
自分の立場をこんなに恨めしく思うことはそうないだろう。
自分の少し前を歩く高い身長、大きな背中。
手を伸ばせばすぐ届く所にいるのに、とても遠くに感じる。
冷たく突き放してくれれば諦めもつくのだろうけど、こんな風
に優しくしてくれたりするから期待してしまう。
「おい、どうした?ぼーっとして。」
無言のまま少し後ろを歩くあたしに愁ちゃんが声を掛ける。
いつも通りの声、いつも通りの口調。
あたしばかりいつもどきどきして
あたしばかりいつも想っていて
「馬鹿みたいじゃん。」
思わず呟いた。
「は?」
あたしの気持ちなんて気付くわけない愁ちゃんはきょとんとす
る。
1月に吹く夜風はかなり冷たくて、あたしはなんだか悲しくな
ってしまう。
子供だから・・・相手にされないで誤魔化されてしまうの?
さすがに泣きはしないけど、泣きそうになる。
「どうして、ちゃんと答えてくれないの?」
愁ちゃんに問いかけた。
すると愁ちゃんは「ああ、そのことか。」みたいな何ともいえ
ない表情をして、くるりと前を向いてしまった。
そして少し長めの前髪をかき上げる。
その仕草がまたはぐらかそうとしているように思えて苛つく。
「あたし・・・っ、本気なんだけどっ!」
まるで気持ちをぶつけるかのように叫んだ。
びくっ、と愁ちゃんの肩が揺れる。