恋の予感-3
でもそれが学校で起きたのは初めてだった。
いつもあのことは頭の中から完全にシャットアウトして何重にも鍵を掛けてあるから、めったなことでもない限りさっきみたいなことは起こらない。
それに万が一起こったとしても、今までは家の中限定だった。
だから私は内心不安で不安で仕方なかった。
父とのあのことを先生に知られてはならない。
そう思ったし、知られてしまうのは絶対に嫌だった。
「心配ごとでもあるのか?」
だからそう先生がそう聞いてきた時、「ないない、あるわけないじゃん」って私は笑って答えるつもりだった。
でも実際にはそううまくはいかなかった。
それは私を再び抱き寄せた先生の手があまりにも優しかったから、とっさに嘘をつけなくなってしまったのだ。
その代わり私の口から出たのは「やっぱり先生とは付き合えない」という、冷たいひと言だった。
「どうして?さっきは俺のこと好きって言ってくれたのに」
先生はそう言って訝しげに私を見つめた。
先生の言うことはいちいち最もだ。
私達はあんなに激しく唇を求め合った直後だったし、今だってこうして私は先生の隣りに寄り添っているのだから。