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優しい人
【青春 恋愛小説】

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優しい人-5

 二人は思織の家に向かって歩いている。途中視力に難有り状態の優太が人や物にぶつかりそうになることが有ったが、さほど問題は無かった。
「僕さ、眼鏡無いとやばいんだよね。」
 優太はそう切り出した。
「何て言うか…自分の黒い部分を抑えるための道具でもあるわけでさ…。途中眼鏡壊されちゃって、そしたら気持ちがどんどん暴走し出して…結果、ああなっちゃったんだ」
 無言で思織はその告白を聞いている。
「思織にだけは見せまいと思ってたんだけど、結局一番酷いとこ見せちゃったね…」
 そして優太の足が止まった。
「もしこんな僕が嫌いになったらそれでいいよ、我慢しないで言ってほしい」
 思織も歩みを止め、優太を見つめ返した。
「優太…」
「何?」
「優太は私のこと嫌い?」
「そんなこと無いよ」
「それが私の答えだよ」
 思織は優太の胸に飛び込んでいった。
「優太…辛かったんだよね?よく頑張ったよ…」
「し、思織…?」
「優太の優しいところが好き。でもね、さっきの優太も、恐かったけど…けど、ちょっとかっこよかったよ?」
 まるで紅葉の様に顔を赤らめる思織。
「これからも…ずっと一緒にいようね」
「…ありがとう、大好きだよ、思織」
 見つめ合った二人は、そのまま深くキスをした。


 翌日の放課後、二人は優太の家にいた。
「思織ありがと〜、助かったよ」
「どういたしまして。大変でしょ?眼鏡無しって」
 眼鏡が壊れたため裸眼の優太は、授業中黒板に書かれた文字が殆ど見えなかった。そのため、思織のノートを見せてもらっていたのである。
「ちょっと待ってて、コーヒーつくるから」
 優太はそう言い、台所へと向かった。
「そうだ!ねぇ優太、聞きたいことあるんだけど」
「なぁにー?」
 声だけで返事をする優太。
「あのさ、優太って格闘技習ってたの?」
 思織がそう尋ねると、台所からは優太の苦笑いが聞こえてきた。
「習ってたら一撃技とか有りそうだけどね」
「じゃあ、自分一人で練習してたの?」
「練習って言うか…イメトレしてただけだよ?」
「イメトレって…頭の中だけの練習なの?!」
「何もそこまで驚かなくても…」
 台所からカップを二人持った優太が顔を出した。
「僕がやれること何てそれくらいなんだから。こんな状況ならこうするとか、反撃されないためには…連続攻撃なら威力無くてもなんとかなるかなぁ?みたいなね。…はい、甘くしてあるよ」
「ありがとう…うん、おいし〜」
 思織が甘いもの好きなのを知っている優太は、コーヒーをいつも甘くするのだ。
「やっぱり優太は優しいね」
「こんな危ないこと考えてる僕でも?」
 優太は苦笑いで自分を指差した。
「優太は…やっぱり優しい優太なんだよ。だから大好きなんだ…」
「ったく、嬉しいこと言ってくれるね、君は」
 優太は思織のことを抱きしめた。

「大好きだよ、思織。これからも…こんな僕だけど…ずっと傍にいて下さい」


END


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