侍BOYS!!〜一番ヶ瀬高校剣道部〜No.2-7
「何ですか、わからないって」
「仕方ないだろう!コーチもそこまでは言っていなかったんだ!」
「言ってなかったって…、言わなかったんなら先生が責任持って聞くべきでしょうが!」
何やら中は揉めているようだ。悪い時に来てしまったらしい。
今日はこのまま退散した方が良いと思った笹岡が、静かにその場を去ろうとした時。
「コーチが骨折して、後任で笹岡武蔵コーチが来てくれるって情報だけじゃ駄目なんですよ?わかってますか?先生!」
中から聞こえた、まさかの自分の名前。
自分も当事者であったとは思いもよらなかった。
帰ろうと背を向けた道場に再び向き返り、泥棒の如く忍び寄って中を窺う。
やや広めの玄関があり、扉を隔てて道場へと繋がっている。
「そっ、そんな事は先生だってわかってるさ!」
「わかってないじゃないですか!わかってたら何も言いませんよ!」
会話を聞くからして、怒鳴っているのは生徒で、怒鳴られているのが先生のようだ。
「…じゃあ今聞いて」
「どうやって聞くんですか?病院に電話するんですか?わざわざ?」
「…」
聞いてると、何だか先生が可哀相になってきた。
「あー、あのー…」
思い切って、笹岡は険悪な雰囲気漂う道場内へと声を掛けた。
「…?あなたは?」
「!…笹岡コーチ…?」
「え?!この人が?」
笹岡の顔を知らなかった小林は、部長から言われて驚いたように笹岡の顔を凝視した。