侍BOYS!!〜一番ヶ瀬高校剣道部〜No.2-6
一番ヶ瀬高校。
聞いた事があるなんてものじゃない、たぶん剣道をしている中高生達の間では有名な高校だ。
『史上最低の弱小剣道部』
元教え子達がそう言っていたのを聞いた事がある。
名門一(にのまえ)高校が、少年剣士の最も憧れる学校なのに対して、一番ヶ瀬は最も入りたくない学校だ。
その高校のコーチがあんな老人だったとは、何となく納得できる。
あんな老体では、10代の体力の有り余っている少年達に満足に教える事は出来ないだろう。
「…さて、どうしようか…」
頼まれた以上は一度くらい行くべきか。電話しておくと言っていたし。
…いつ電話してくれるんだろうか。
「…今、ちょっくら行ってくるかな…」
笹岡は川原で一回大きく伸びをして、先程よりいくらか晴れやかな表情で一番ヶ瀬高校へと向かった。
**
ややくたびれた感じのある白い校舎。
否、元白い校舎とでも言っておこうか。
笹岡が一番ヶ瀬高校に到着した頃には、もう既に授業は終わっていた為、校舎の外にも何人かの生徒がたむろしていた。
校舎前で左右を確認し、左側に道場らしき建物を目視した笹岡は、頭を一度ボリボリ掻いて目的の場所へと近付く。
「ん?」
目的地付近に差し掛かると、その前に女子生徒が一人。中を窺うようにして覗いている。
もしや剣道部だろうか?
「おい」
「ひっ!ちっ、違います!ストーカーじゃないです!さよならっ!」
「え?あっちょっ、おい!」
剣道場がここでいいのか聞こうとした笹岡であったが、声を掛けた直後に女子生徒は慌ててその場を後にしてしまった。
「何なんだよおい…」
ぶつぶつ言いながら建物に近付けば、
「いつから来てくれるかわからない?!!」
と、中から怒鳴り声に近い声が聞こえてきた。
いきなりの怒声に驚きながらも、目の端に『一番ヶ瀬高校剣道部』と書かれた看板を確認する。
どうやらここが道場で間違いない。