侍BOYS!!〜一番ヶ瀬高校剣道部〜No.2-5
「宮本武蔵って…、馬鹿かよ」
「馬鹿?!なんだ馬鹿とは…、って、お前はおれのクラスの…小次郎!!」
「誰が小次郎だ。宮本武蔵引っ張ってんじゃねぇよ」
「それに春樹も!!」
「春海なんですけどー」
「なんだ、もしかして新入生か!!それも3人も!!よくぞ入ってくれた、歓迎するぞ!!」
話は大いに脱線し、小林の話題は新入生に向けられた。
「つぅか僕達は今どうでもいいのでコーチはどうなってんですか?」
「武蔵と小次郎…宿命の相手が現代に…!」
「だから違ぇっての」
「武蔵?」
『武蔵』の名に部長が反応した。
「武蔵ってもしかして…笹岡武蔵の事ですか?」
「おぉ!確かそんな感じだったぞ!」
「笹岡武蔵って言えば、中学剣道の名コーチじゃないの」
「…川原で何してたんすかね」
「その笹岡コーチはいつから来てくれるんですか?」
「それが…」
***
ピーポーピーポー…
去って行く救急車の後ろを見つめながら、笹岡は今までの事を頭の中で整理していた。
今日の朝、今までコーチを勤めていた中学から放り投げられ、捨て犬のように川原で黄昏ているところに見知らぬ老人と出会い、思いもかけず拾ってもらえそうな高校が見付かった。
“場所はのう…、一番ヶ瀬じゃ”
“…いちば…かせ、ですか?”
“名前くらいは聞いた事があろう?わしが電話しておく、後任を頼んでよろしいか?”
“…えぇ、まぁ…”
ピーポーピーポー…
“そういや、お前さんの名前を聞いとらんかった。何ちゅう名かのう?”
“あ、笹岡…武蔵です”
“ほう、武蔵か。どこかで耳にしたような気がするが…、うむ、良い名じゃな。では武蔵、頼んだぞ”