侍BOYS!!〜一番ヶ瀬高校剣道部〜No.2-4
「いやあの、こちらのコーチがどうかしたのかなって…」
「あ?あぁ、なんだそんな事か…」
「聞いてなかったの?骨折したって言ってたじゃない」
「それは聞いてましたけど…、なんか、予想してたみたいな…」
「…前橋コーチ、御年86歳」
「え?」
「ボケちゃいないけど、年齢重ねて骨は弱くなるあちこち痛くなる、予想出来なくはないでしょ?」
「…確かに」
コーチの前橋善治は、もうすぐ米寿の86歳。
年を取るにつれて骨の密度はどんどんと減っていき、所謂骨粗鬆症状態になる老人は少なくない。
例に漏れず、前橋老人も骨粗鬆症状態だった為に、転倒だけで骨折という惨事に至ったのだろう。
「…で、小林先生」
樹が柊達にコーチの説明を終えるのを待って、部長が小林に話を切り出しだ。
「これからどうするんですか?」
「これからって?」
「…」
「やだコバセン、それ本気ボケ?」
「だったら始末に終えないすね」
空気が読めないというかなんというか、熱血の割に頭の回転は弱いらしい。
「ですから、自分達のコーチはどうするんですか?」
「ああ!それなら大丈夫だ!なんか、代わりの人がいるらしいぞ!」
「?どういう事です?」
「どうやら、コーチを助けてくれた(?)人が剣道してる人らしくて、運ばれる寸前に名前聞いたみたいなんだが…」
「前橋コーチ、どこで骨折したんですか?」
「川原だとよ」
「…何してたんですか、コーチ…」
「さぁ、それは知らんが。で、その代わりのコーチってのが結構有名な人らしくて」
「誰ですか?」
「…宮本武蔵?」
「…」
小林の発した人物の名前に、それを聞いていた者は皆一様に口を開けてフリーズした。