侍BOYS!!〜一番ヶ瀬高校剣道部〜No.2-2
「はぁ…、まだまだ大丈夫かと思いますよ?」
「ホントかのぅ〜?…じゃあその言葉を信じて、わしももう少し頑張るとするかのっ!」
笹岡の取って付けたような励ましの言葉に、老人は意気揚々と立ち上がった。
「どれ、それじゃあ今日も指南しに行くとするかね。ではわしはこれで」
「あ、はぁ…」
控えめに手を振る老人に、笹岡も控えめに手を振る。
本当ならば、自分もこの時間は生徒等に剣道を教えに行く準備をしている時間なのに。
そう思いながら老人の背中を見つめていると、
「うおぅ?!」
突然、老人の身体が大きく揺れて、そのまま変な感じに地面へと落下していった。
「!??じーさん?!」
いきなりの大転倒に驚きながらも、笹岡は地面と平行になった老人の安否を気遣い、足早に駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか…?!」
声を掛ければ「大丈夫、大丈夫」と笑いながら返答するが、どう見ても右手と左足が大丈夫でない方向を向いている。
「…やはり、わしにはもう剣道は無理だという神様からの忠告じゃの…」
取り敢えず救急車を要請し、様子を窺う笹岡に老人がぼそりと呟いた。
「良い機会だ、剣道はもう若人に任せよう。わしは隠居じゃ隠居!」
はっはっはと、老人は唾を飛ばして豪快に笑う。
その姿を見た笹岡は、足と腕が痛くないのかなんて事を少し思った。
「…そうだ、お前さん。剣道は教えた事あるのかい?」
「え?…まぁ、一応…」
「それなら、わしの代わりに指南役をお願いしても良いかのう?わしじゃろくな稽古もつけられなんだ、あいつ等には悪い事をした…」
「…はぁ…」
遠い目をしながら、老人は悟ったように言った。
しかしこの老人、本当に痛くはないのだろうか?
「ではお前さん、頼んだぞ!」
「はぁ…」
「場所はのう…」