超最強嫉妬彼女 後編-8
「ちょっと公也、どこ行くの?」
「優子んとこ」
俺がベランダへと出る窓を開けると、花耶は激しく狼狽した。
「いいからついてこい」
「…」
二人してベランダに出る。
「こっちだ」
俺は花耶を連れて壁の前に立った。
「…これってお隣さんとの間にある壁だよね」
「そうだよ」
俺はそう言いながら、壁を持ち上げて外した。
「ふぇ!?」
壁を破るだけなら子供でもできるらしいが、その場の勢いで破るのもその後の見栄え的な問題でやめた。
ただ、変わりに壁を外すことにしたのだが、これには苦労した。
「素手ならお前くらいじゃないと外せないけどな。俺が一年の時、椅子ぶん投げてぶっ壊した」
「……」
「優子のために」
俺はジョークを交えながら言ったつもりだったが、花耶は笑わなかった。
「…じゃあユウコは、お隣さん?」
「正解。じゃあ行くぞ」
「……うん」
曇りガラスの窓に軽くノックした。
「優子、俺だ」
「……」
反応はない。
「……入るぞ」
窓をスライドさせると、カラカラという音と共に開かれる。
「…来ないで」
か細い声が聞こえた。
「優子、俺だよ」
「隣の子は誰っ!!」
「……優子」
「誰にも見られたくない…会いたくないっ!」
「……」
花耶は黙って俺を見つめている。
「こいつは花耶。俺の彼女だ」
「…か…彼女?」
すると優子はもぞもぞと動き出した。
「……公也くんの彼女?」
「そうだよ」
「……入って」
優子が小さくそう言ったのを確認して、俺は花耶を入るように促した。
続いて俺も部屋に入る。
「……あなたが、公也くんの彼女?」
「はい、花耶です」
花耶は小さく頭を下げた。
「…お茶持ってくるから、座ってて」
「おう」
「…」
優子はゆっくりと部屋を出ていった。