「僕らのゆくえ 3(時子)」-1
「そうだ。明後日、お葬式で父さんも母さんも居ないから」
二人で留守番よろしくね、と夕食後の片付けをしながら、母さんが言った。
私は居間でテレビ。
千比絽はお風呂上がりに、冷蔵庫から牛乳を取り出していた。
暫し、沈黙が広がる―。
「分かった」
「明後日は友達ん家に泊まるから」
絶妙に私と千比絽の言葉は重なったのに、私は鋭く千比絽の言葉を捉えていた。
千比絽は手を腰に当て、ごきゅごきゅと牛乳を飲み干すと(オッサンか!)、目も合わせず自室へ戻る。
「…何なのかしらねえ、あの子は。今頃になって進路もかえるって言うし…」
ため息まじりの母さんの声に、私は驚いた。
「えっ。東高じゃないの?」
春の進路調査では、千比絽は私と一緒の東高を志望していたはずだ。
「あらあ。時子も聞いてない?千比絽、県外の美術科のある高校に行きたいんですって」
目の前が真っ暗になった。
つまりは、家を出ていくということだ。
―そんなに、私が嫌いか。
何故か悔しさが込み上げてくる。
私のこの想いは千比絽に届かないのだ。
そう思うと、哀しくて、やるせなくて。
―苦しくて。
下瞼に滴が溜まる。
ばか。
千比絽のばか。