カウントダウン-6
「だから、躊躇わないで今すぐ触れてよ………って、とわわっ!」
突然の衝撃に、妙な声が出る。抗議でも立てたかったけれど、それは叶いそうにもなかった。
カウントダウンをする暇もなく、あたしは暖かくて、大きくて、そして大好きな人の体に包まれたから。
「キスして」
願いを口にすれば、すぐに望んでいたものがやってくる。
カサカサと乾燥してて、でも、甘くて、溶けるキス。
大好きな人とのキス。
「先越されたな」
唇が離れると、いつもの低音が耳元で囁かれた。
そのまま、譲治はごそごそと何かを探す素振りをみせる。そうして、ポケットから出てきたのは手のひらに乗る小さな箱。
ドラマで見るような手の込んだ装飾をされた小箱は、ゆっくりと開かれて、中身が覗く。
中には、―――指輪。
弾けるように顔を上げると、目の前には真っ赤に染まった譲治の顔があった。
ゴホンと咳払いをして、息を整えている。
「こんな場所で悪いけど」と前置きされる。
「今まで不安にさせて悪かった。……何というか、生徒に手を出してるからとかじゃなくて、……お前だから触れるのを躊躇ってたんだ」
いつもの授業中の諭すような口調は形無しで、言葉を選ぶように口をパクパクと開け閉めする様子はなんとも情けなく、そしてその倍愛しかった。
「いつも悩んでたんだ。俺でいいのか、って。未来あるお前の時間を俺が奪っていいのか。手を離すなら今じゃないのか、って」
射抜くような視線があたしに向けられて、それから意を決したように口は開かれた。
「でも、もう絶対躊躇わないから……だから……だな、俺と、……その……」
大好きな人からのプロポーズまで、
ごー
よん
さん
にぃ
いち
end