黒魔術師の恋愛事情〜麻里-4
「…真彦君、凄いね…」
今、麻里と真彦は予定通り(?)勉強を始めている。
「そうか?こんなもんだと思うぞ?」
真彦は平然と答える。しかし、どの教化でも麻里が分からなかった問題を、真彦はあっさりと答え、さらに解りやすく解説までしてくれているのだ。麻里の頭が悪いわけでは無いから、問題も難しいものばかりのはずなのだが。
「真彦君って定期テストの上位者に名前乗ってないよね?」
「だって、テストで上位になって名前乗るとどうしても目立つじゃん?あ、でも模試で上位者名前掲載拒否が出来るやつならだいたいA判定出せるけど」
要するに、真彦はテストでわざと間違えているわけだ。
「頭いいのね…」
麻里は苦笑いを浮かべた。
「けど、もうその必要も無いよ。麻里と付き合うってことでもう目立っちまうんだしさ」
「うん…そうだね」
麻里もそれには同意した。
「さて…ふ…ふあぁぁ…」
真彦は不意に大きなあくびをした。
「どうしたの?あくびなんかして」
「いやね、今朝4時まで起きてたって言ったろ?実は海堂さんの元彼撃退の手段として黒魔術の儀式したんだけどさ。それの片付けしてたらあんな時間になっちまったんだよ…」
「あぁ、昨日休んだ理由ね?」
「うん。黒魔術の道具の片付けはそうでも無いんだけど、儀式の供え物やら元彼君の『私物だった物』やらの処理に困っててさ。簡単に捨てれる物じゃなかったから…」
「それ、何だったの?」
「…聞かないでくれ。思い出したくないよ…」
真彦はため息混じりに呟いた。どうやら相当キワドイ物らしい。麻里はそれ麻里はそれ以上聞かないでおいた。
「でも呪術は成功。海堂さんにストーカー行為をしようと考えただけで息苦しくなって…。死にはしないけど嫌な気分しか残らないようにしておいた。近づいても同じさ。そのうち完全に諦めるよ」
真彦は何も起こらないことを確信したような言い方だった。
「海堂さんは彼氏ができたら元彼も諦めるだろうと思ったんだってさ」
「そう言えば、結局藍羽君は海堂さんと付き合うの?」
「いや、断ってたぞ。何でも他に好きな子がいるらしいけど」
「へぇ。海堂さんに勝った女の子がいるんだ…」
「それが誰なのかは俺も知らないけどね」
どうやら光輝の恋は、親友の真彦にさえ言えないものらしい。
「いいなぁ…。そうだ!藍羽君に彼女さんができたら、ダブルデートしよっか?」
「そうだな…、それもいいな。そん時は光輝の彼女も見れることだし」
二人の話題は、いつ光輝に彼女が出来るのかなぁというものに移っていた。数日後にそれが判明するなど知る由も無く。
「…って、他人の恋より自分達の幸せを掴む方が優先されなきゃだよね?」
麻里のその一言に真彦も、そうだなと言って頷いた。
「俺の生活、黒魔術ばっかだったから幸せなんて程遠い物だったけど、今はこんな近くにいるんだしね!」
真彦は麻里の肩を抱き寄せ満面の笑みを浮かべていた。
「真彦の傍にいれて、私も幸せだよ!」
相手が黒魔術師だろうと関係無い。この黒須真彦という人物と、幸せな生活を送っていこう。麻里はそう思うのだった。
END