黒魔術師の恋愛事情〜麻里-2
ずっと真彦のことを考えていたから、あんな夢を見るんだろうか?麻里はふとそう思った。しかも、夢に出て来た女はやはり海堂千夏である。
「そういえば今日は誰も家にいないのよね…呼んじゃおうかな?」
今日は土曜で学校が休みだ。両親は仕事でいない。
「…勉強教えてって言えば来てくれるよね?」
麻里は早速メールを打ち込んだ。
『突然だけど、家で勉強会しない?分からないとこがあるんだけど』
「…これで大丈夫よね?」
本文を確認し、送信ボタンを押す。ディスプレイに出る送信完了の文字…を見た後に気付いた。
「あ…まだ4時前だ…」
普通誰だって寝ている時間だ。こんな時間にメールしたんじゃ、いつ返ってくるかわからない。
「真彦君怒るかなぁ?」
しかしその心配は必要無かった。なんと、真彦からメールが返ってきたのだ。
『時間早すぎだって(笑)勉強会ね?OK、何時に行けばいい?』
文面を見ると大して怒ってもいないようだ。
「っていうか真彦君起きてたの?魔法使いは違うなぁ」
思わず笑ってしまいながらも、麻里はメールを返信する。
『ごめんね、起こしちゃって。9時に来れるかな?』
そのメールの返事はすぐに来た。
『わかった。んじゃあまた後でね(一旦寝直すからさ)zzz』
「ふふっ、寝ちゃった」
やはり真彦は自分の彼氏だ。恋人同士じゃなければこんな時間にメールなんて出来ないだろう。麻里はそう思って、再び目を閉じた。
その後麻里が目覚めたのは8時だった。
「…ギリギリかな?」
麻里はすぐさま準備に取り掛かった。
朝食をとり、着替えて、髪形を整える。メイクは…と考え、ほんの少しだけすることにした。部屋も掃除しておこうと思い、掃除し始めた時に、家のチャイムが鳴った。
「嘘!もう来ちゃったの?」
見ると約束の9時を既に回っていた。
「あちゃー間に合わなかったか…」
普段から汚くはしていないから、それほど問題は無いよね?と自問自答しながら、麻里は玄関のドアを開けた。
「おはよ!」
ドアの外には眼鏡を掛けていない真彦がいた。真彦は麻里と二人きりになる時は眼鏡を外している。普段の眼鏡は伊達眼鏡だから必要が無いのだ。
「おはよう。ごめんね、あんな早くメールしちゃってさ」
「いいんだよ、ちょっとした仕事の後始末してたから俺も起きてたんだ。それに俺も麻里に会いたかったしな」
「ありがとう。さ、入って。誰もいないから気にしなくていいよ」
「お邪魔しまーす」
真彦は麻里の家に入っていった。
「ここで待ってて、飲物持ってくるから。何か飲みたいのある?」
真彦を自分の部屋に案内してから、麻里は真彦に尋ねた。
「何でもいいよ」
真彦はテーブルの近くの床に座ってゆったりとしていた。
「わかった。すぐ持ってくるね」
麻里は台所に行くと、麦茶をコップに注いで部屋に持って行った。
「お待たせ〜」
「サンキュー」
麻里はテーブルに2つのコップを置いて、真彦の隣に座る。
「さて、勉強だっけ…」
「あ、うん…」
麻里は少し焦った。今朝は勉強という理由でメールを送ってしまったが、実際は真彦とのことが不安で仕方なかったからである。
先程までは忘れることが出来ていたが、急に不安な気持ちに襲われてしまう。
「その前にさ、一つ聞いていい?麻里さ、本当に勉強のことでメールしたの?」
真彦は表情を変えずに聞いた。
「え?どうして?」
「だって、勉強が分からないからって朝4時にメールなんかしないでしょ?何か相談事があるんじゃないの?」
笑いながらそう尋ねる真彦は、まだ麻里の悩みを知らないらしい。