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秘密〜出会い〜
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秘密〜初彼〜-1

私、澤井夏実(さわい なつみ)に、初めて彼氏が出来たのは、高1の冬でした。

相手はバイト先で知り合った二個上の人。
まっ茶色の髪に、切長の目。
しっかりした体つきに、ゴツゴツした手。
真っ赤なピアスが良く似合う人だった。

中学の頃からしょっちゅうケンカしてて、『この間、バイクで二人乗りしてて、パトカーに追いかけられたけど振りきった』なんて自慢するオレ様的なヤンキーで、絶対好きにならないタイプだったんだけど…

ある雨の日、バイト先の裏口付近に1匹の子猫が捨てられてた。
彼は、いとおしそうにその猫を抱きしめ、服の中にしまうと、そのままバイクに乗り帰って行った。

その意外な姿を目にして以来、私は彼のことが気になり、気付けば好きになっていた。

でも、私なんか可愛くないし、美人でもない。
胸なんてペッタンコだし…

こんな私を好きになってくれるわけがない。

私は傷付くのが怖くて、彼に近付こうとはしなかった。
ただ、好きでいられれば、それで十分だった。

そんなある日、バイトの休憩中、バイトのメンバーたちとケータイの番号交換をすることになり、たまたま同じく休憩してた彼とも、その場の勢いに乗って交換した。

とっても緊張したけど、もの凄く嬉しかった!

どんな時連絡しようか。
バイトが重なった日、お疲れさまでしたっとかって送ろうか。
そんなの変かな?
等と、ウキウキしながら考えていた。

交換したその日の夜、彼から電話がかかってきた。

びっくりして、嬉しくて、緊張して、上手く喋れなくて…散々だったけど、凄く幸せだった。
一晩中ケータイを握りしめて寝たっけ。
どんな話をしたかもう覚えてないけど、あの時の気持ちは、今でも良く覚えてる。

その日以来、彼から時々電話が来るようになった。

バイトの店長やメンバーの話。
学校の先生や友達の話。
昨日みたテレビの話。
バイクの話。
中学時代の話。

一回、10分位の短い電話だったけど、いろんな話をした。

そしてクリスマス、告られて付き合うことになった。

嬉しくて涙が出た。
好きな人に好きって言って貰えて、とっても幸せだった。
今、世界中で私が一番幸せだって思った。

ある時、バイト先で捨てられてた猫のことを聞いたの。
そしたら、『元気だよ。今度家に見に来る?』って言ってくれた。
私はドキドキしながら彼の家に遊びに行った。
彼の部屋に入ると、あの猫がいた。
猫は、あの時より大きく、しっかりしていた。
私が抱っこすると、気持ちよさそうに鳴いて寝入った。
『可愛いね』
私がそう、隣に座っていた彼の方を向いて言うと、そっとキスをされた。
とても優しく、甘いキスだった。

今腕の中にいるのは猫だけど、いつか彼との子どもを抱っこしながら、またこうしてキスが出来たらって思ったっけ。

そうそう、いつも彼から電話かけてきてくれるから、付き合う前に一度、私から勇気を出してかけたことがあった。


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