秘密〜初彼〜-2
震える指でボタンを押した。
トゥルルルル…
かかった!
思わず電話を切りそうになったけど、ここで切ったらただのイタ電。
グッとこらえて、ケータイを強く握りしめた。
コール音が四回、五回…
まだ出ない。
七回、八回…
私の緊張感や勇気はみるみるしぼんでいった。
そして、十回目のコールが鳴り止んだところで、私は電話を切った。
「はぁぁぁ…」
大きなため息をつき、ベッドにうつ伏せに倒れこんだ時、電話がきた!
彼からの電話の時だけ鳴るようにした着信音に耳を疑いつつ、私は慌ててディスプレイを見た。
彼の名前!
私は泣きそうになりながら電話に出た。
彼はいつもそうだった。
付き合ってからも、私からの電話にはあえて出ず、自分からかけ直して、私に出させた。
私が
『電話代がかかるから』
って言ったら
『お前がそんなこと気にすんな』
って言ってくれた。
彼のそんなところが好きで、
そんなところが苦しかった…
お互い学生で、もう親からのおこづかいなんてなくて、バイトで稼ぐしかなくて、そんなバイトもたいして時給良くなくて…
お金ないの、知ってた。
私から電話かければ、いつだってすぐに折り返し電話くれた。
デート代は全部彼が払ってくれた。
それが申し訳なくて、苦しくて…
電話代がかかるから、いつも話は手短に済ませた。
私からあまりかけないようにした。
彼がメールは嫌いだって言うからしなかった。
会えば、何かしらでお金使うから、あまり会わないようにした。
何より受験生だったから、邪魔しちゃいけないと思って、控えてた。
でも、ホントはもっと話たかった!
会いたかった!
ずっと一緒にいたかった!!
私のそういう思いは、彼には、冷たい態度をとっているようにしか映らなかったらしく…