投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

LAST DAY
【その他 その他小説】

LAST DAYの最初へ LAST DAY 8 LAST DAY 10 LAST DAYの最後へ

LAST DAY-9

【LAST DAY】





-4-





「間違えてしまったってこと?」

「そう」


 遼太郎が隣に座ってボクの顔をのぞき込んできた。ボクは小さく頷いてみせる。
 学校の帰り道、ボクと遼太郎は並んで歩いていく。ボクも遼太郎も家に帰りたくなくて、でも、帰らなくちゃいけないから。ゆっくり、ゆっくり。家に向かって歩いていた。
 遼太郎は、好きだ。優しい。それに、同じにおいがする。お父さんに殴られているせいだという体のあざを、でもちっとも気にしないみたいに笑う。その笑顔の向こうで、すごくすごく傷ついているのがわかる。わかってしまう。そうやってわかってしまうのは、同じ、だからだと思う。


「母さんはボクが嫌いだったんだ。頭も悪いし、なんにもうまくできない『さくら』が嫌いだった。だからボクはよく叩かれたし、家にいれてもらえないこともあったよ。……あの日、山に行った時ね、崖に花をとりにいったのはもみじだったんだ」


 遼太郎は何にも言わずに、ただじっとボクの顔を見ながら話を聞いてくれる。


「そのときにこけて、もみじは足をケガしちゃったんだ。母さんはすごく怒った。もみじに取りに行かせた『さくら』のせいだ、って。それで、ボクを突き落とそうとした。それをもみじがかばった。それで、もみじが、落ちた」


 双子の兄の、もみじのことを思い出す。優しい兄。ボクと同じ顔をして、でもボクよりも優しく笑った。ボクが母さんに優しくされないことをすごく気にしていた。苦しんでいた。
 ああ、そうか、遼太郎は似ている。もみじに似てるんだ。


「それから、母さんはボクを叩かなくなった。だってボクがもみじになったから。さくらは死んだんだって母さんは言った。そうしたいんだろうなってわかった。母さんは殺すべき子供を間違えたんだ。でもそれが嫌だったから、なかったことになった。ボクは、さくらって呼んでもらえなくなった……」


 それでもいいって思った。母さんが泣かないなら、それでもいいって。でもそれは、本当は、母さんの為なんかじゃなくて、ボクのためだったんだ。叩かれるのが嫌だから。もみじを利用して、幸せになろうとしたのかもしれない。
 でも、そんなこと、できるわけなかったんだ。


「そっかあ……」

「うん」

「……じゃあさ、僕は、さくらって呼んでもいい?」

「え?」


 驚いて顔を見返したボクに、遼太郎はにっこり笑った。


LAST DAYの最初へ LAST DAY 8 LAST DAY 10 LAST DAYの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前