LAST DAY-4
【LAST DAY】
-2-
大きなことを成し遂げたことなどない。でも、自分にはその力があると思う。今はそのときでないだけなのだ。我慢のときなのだ。だから仕方がない。辛いことも我慢しなくちゃいけない。やりたくないこともやるし、やりたいこともやらずにいる。仕方がない。今はそのときじゃない……
「あはは、いい訳っていうんだよ、ソウイウの」
「……子供にはわからないさ」
「そうだね。それできみはいつから我慢してるの?」
専門学校へ行くことを我慢して親の勧める高校へ入った。就職して修行をつむことを我慢して大学へ進学した。そして今、やりたくもない訪問販売の仕事を、我慢して、やっている。
ああ、俺は、子供のときから我慢ばかりしているんだ。
「……そんなこといったって、仕方ないじゃないか……」
「『仕方ない』、『我慢しなくちゃいけない』、『今はまだ』。ねえ、誰にいい訳をしてるのさ。あのさ、教えてあげようか迷ったんだけど、きみなんかカワイソウだから、教えてあげる」
「なんだよ」
「あのさ、今日で最後だよ」
「……はあ?」
「明日で世界、終わるよ。今日が最後の日。だからきみの我慢も後悔も全部、終わる。なんにもならずに終わるよ。残念だったね」
この子供は一体何をいいだすのか。思えば最初から変なやつだとは気づいていたのだ。仕事がうまくいかずにこうして公園でサボっていた俺に、笑いながら話し掛けてきたときから。だいたい中学校の制服を着ているのに、こんな時間にこんなところにいる。学校はもう始まっている時間だろう。それに、どうして男子の制服を着ているんだろうか。最近はそういうのが流行っているのか?
少女は俺の疑わしげな顔をどうでもよさそうに笑うと、
「あ、信じてない」
「当然だろう」
「そう?じゃあいいけど。でもさ、じゃあきみはなんで明日があるって信じられるの」
「え?」
「誰かきみにそういった?明日で終わりじゃありませんヨ、って?」
「言われてないけど……」
「じゃあきみは何を信じて、いつの為に、我慢してるわけ?」
どき、とした。