LAST DAY-13
「あのね、放っておいても髪の毛って伸びるんだよ」
「はあ……?」
「今もね、ちょっとづつ伸びてるんだって。お兄ちゃんが言ってたの。爪も伸びるし、背も大きくなるし、頭もよくなるの」
「ええっと……何がいいたいんだい?」
だからね、我慢してるんじゃないの。
「私のカラダはきっと、何にも言わないけれど、ちゃんと明日を信じてるんだ。無いかもしれない明日の為に、でも、おっきくなるの。変わっていくの。だから私が今を変えないのは、我慢じゃなくて、守ってるの。今の自分を守っていけば、絶対違うものになるんだ。だから、ね、無駄とかじゃないよ」
もしも明日で世界が終わったとしても、私は、今日の自分を守りきった私を褒めてあげられる。
「それに……私は、お兄ちゃんがいれば幸せだからいいの!」
「そっか、お兄ちゃんのことが大好きなんだね。ええっと……遼太郎くん、だっけ?」
「そう!お兄ちゃんはすっごく優しいんだよ。それに頭もいいし、かっこいいの!」
胸を張ってそういった私の頭をお兄さんはそっと撫でて、それで、ちょっと幸せそうに笑った。
「いやあ……教わることが多くて、俺は参っちゃうよ……」
「なにが?」
「いや、こっちの話。ああ、引き留めちゃってゴメンな、忘れ物をとりにいくんだよな」
「あ、うん、そうだ!」
急いで行かなくっちゃ。
お兄さんにばいばいをして私は走り出した。後ろから声が聞こえて、
「明日香ちゃん!遼太郎くんによろしくな」
私は振り向いて、大きく頷いて、そして家に向かって走っていく。
【LAST DAY】