LAST DAY-10
「ねえ、さくら」
なんだか少し照れてしまう。
「僕の妹になる?」
「……え?」
「ね、どうだろ。僕の妹で、明日香のお姉ちゃん。それで、兄妹仲良く暮らすんだ」
それはすごくすごくステキな提案に思えた。遼太郎が、ボクのお兄ちゃんになる。明日香がボクの妹になって、二人がボクをさくらと呼ぶ……。
「……じゃあ、ボクがちゃんと、殺せたら」
「うん」
「最後の日に殺すから。『もみじ』を、殺すから。そしたらボクのことさくらって呼んで。そしたら、ボク、遼太郎の妹になりたい」
「うん」
優しく笑った遼太郎が、ふわふわとボクの頭を撫でた。まるで本当のお兄ちゃんみたいに。
ボクは嬉しくなって、幸せで、そして少しだけ悲しかった。
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あしおと。
地面を直接響いてくる音に、けれど顔をあげる力はもうなくて、そうして倒れ込んだままで、赤い色を垂れ流したままで、
「さくら」
ああ、りょうたろう、だ。
「良かったね、ちゃんと、もみじを殺せたんだね。僕もあいつを殺したよ。もう、これで、大丈夫だ」
もう苦しまなくていいんだ、と言った遼太郎の声がふるえているみたいで、きっと、泣いているんだろうとわかった。嬉しいのかな、悲しいのかな。聞きたいけれど、もう、声もでないから。
「なんにも心配しなくて大丈夫だよ。明日で世界は終わるから。今日で最後だから。だから、もうなんにも怖くない。さくらのママも、もう悲しむこともないから。大丈夫、大丈夫だよ。心配しなくていいんだよ」
うん、うん。
遼太郎もね。大丈夫だよ。きっと明日香はちゃあんと幸せだよ。もう痛い思いをしなくていいんだから。明日になれば全部終わるんだから。なにも、心配することなんてない。ねえ、私は言ってあげられないけれど、大丈夫だよね?怖がらなくていいよ。大丈夫だよ。
だから、泣かないで。