放課後のMくんとSさん。-2
「あっ待って高遠!!」
俺の声に、少しビクッとして振り返る。
少し内股になっている細っこい足が、俺に寒さを伝える。
「コレ。使って。いままで着てたから汗くさいかもだけど」
そう言ってジャージを渡した。
『....ありがとう』
少し俯き気味に、高遠はそう答えた。
『あの、ホントありがとね。あと部活おつかれ様』
今度は俺の顔をちゃんと見て、笑ってそう言ってくれた。
おいおい。かわいすぎだって。
はー....なんなんだお前。
高遠はもう一度階段の方へ向き直り、俺は階段へ向かう高遠を見送った。
やべ....かわいすぎる。
高遠の気もちには気づいていた。
たまに高遠の視線を感じていた。
高遠の方を見たら、高遠はさっと目を背ける。
そんな仕草ですらかわいくて仕方なかった。
俺が今まで好きになった子に、そんな子はいなかったから。
“今どきこんな純粋っぽい子がいるんだ”
“そんな子が俺のコトを”
そう思うと、なんか女の子っぽい表情になるけど胸がぎゅーっとなって、いつも抱きしめたくて仕方なかった。
あの小っこいからだ全部、俺で覆いつくしたかった。
“アイツ、今まで誰かとつき合ったコトあんのかな....
最近の反応をみてるとなさそうだけど”
折れちゃうくらいに抱きしめたらどんな態度をとるのか。
キスした時はどんな表情をするのか。
そんなんばっか、頭ん中はいつも高遠で占領されていた。
俺はいつもの雑談をせずにタオルだけ肩にかけ、着替えもせずに教室に向かった。
先輩達はなしたんだ、みたいな目で見てたけど。
高遠とのやりとりを見ていたヤツらがニヤニヤしてたけど。
そんなん関係ねー。
教室のドアまであと3歩。
....はー。
一息つく。
高遠が待ってくれてんだ。早く行かなきゃ。
でも、俺いまガラにもなくキンチョーしてる。
落ち着け....
落ち着け自分。
もう一度一息つき、教室のドアを開けた。
外を眺めていた高遠がこちらを向く。