満月<ALLEGORY>-1
「リコってさぁ、月に例えるなら何だと思う?」
僕の好きな人が頭上を見上げながら問う。
「さぁ。何だろう」
ボクは首を傾げた。
「んもぉ〜!ちゃんと考えてよねぇ!何だと思う〜?」
予想通りの反応が返ってくる。そんな愛理子が可愛いくて、ボクはもっと困らせたくなった。
「う〜ん、何だろうなぁ。う〜ん」
愛理子が聞きたい答えを分かっているけど、ボクは焦らす。痺れを切らしたように愛理子は自分で答えをバラしてしまった。
「もぉ〜っ!満月に決まってんでしょー!?」
「あ、そうだね。気付かなかったよ」
すると愛理子は小さな子供のようにバタバタと足を動かした。
制服のスカートをそんな短く切っといて、その行動はボク以外の前でされたくはない。
「リコはカワイイんだから満月なのっ!満月みたく綺麗でカワイイのぉ!」
愛理子は頬を膨らませ、プイッとそっぽを向いてしまった。
確かに、愛理子の目元はキラキラしているし、髪の毛もブロンドに染め上げている。
「…リコが満月で香が新月なんだもん」
「ボク、新月なんだ?」
「新月って見えてないだけなんだもん。地味で存在感無い香そのものじゃん!バカァ!」
不貞腐れたのか、愛理子はそう言い放った。
「ふふ、そっか。愛理子の言う通りだね」
全てボクの予想通りに動く愛理子が可愛い。
コロコロとボクだけのために表情を変えてくれる。
「もーっ、何笑ってんのぉ!」
そして最終的にボクに向き直る形に戻る。
「あんた地味過ぎー!暗ーい!もう、こんな眼鏡取っちゃえー!」
愛理子の手のひらが視界いっぱいに広がったと思ったら、次の瞬間にはムスッとして、ボクの眼鏡を握っている愛理子が現れた。
眼鏡が外されたからと言って、視界が歪む訳でも無いのに全くこの子は…。
「おわわわわっ!?」
ボクは愛理子の両手首を掴んで、被さるように押し倒した。
大きな目が更に大きくなってパチパチと瞬きをしている。
「そんなことしちゃダメでしょう?」
大好きなキミが怯えないよう、優しく優しく囁く。
「愛理子、知ってる?満月の夜は狼男が狼に変身しちゃうんだよ」
優しく妖しく、キミの首筋に唇を寄せる。
ピクンと強張るキミの体全てが可愛くて愛しくて仕方ない。
「もしボクが狼男だったらどうする?あんまり悪い子だとオソっちゃうよ」
満月のせいでいつもより明るい夜。
首を傾ければ、愛理子の耳まで紅く染まっている様が見てとれた。
美味しそうなそれを甘噛みすると、ビクンと体を捩らせて吐息混じりの小さな声を漏らす。
頭を持ち上げてキミの顔を見つめる。
ぷぅっと頬を膨らまして尖った唇に、ボクは甘い甘いキスを落とした。
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