生まれたての愛を-5
「私があの子を育てることは出来るんですか?」
男性の表情は、見る間に驚きのものへと変わっていく。
男性だけじゃない。今誰かが近くにいたら、きっと誰だって驚くだろう。私はそれだけのことを言ったのだから。
けれど、街灯に照らされた男性の目尻には、先程よりも皺が増えたように見えて、それだけで心が救われたした。
男性の口が開かれる。これからどんな言葉が返ってくるなんて予想もつかない。一秒先のことでさえ、全く予測がつかないのだ。
帰宅の電車に乗っていた頃の私が、降りて数分後にこんな事になるなんて知らなかったように。
一分後の私は、一体どんな表情をしているのだろうか。
けれど一つだけ確かな未来があった。
私の胸に宿ったこの熱さは、きっといつまでも消えることはないだろう。
胸が熱い。
何か熱い塊を飲み込んだような感覚に、私はそっと胸を撫でるように触れた。
これは愛が胸に落ちていく感覚なのかもしれない。
だって私は今確かに、生まれたての愛を飲み込んだのだから。
end