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生まれたての愛を
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生まれたての愛を-4

 ベッドタウンのこの街では、この時間になると公園はおろか、前を通る道路すらも人通りは極端に減ってしまう。
 かつては新興住宅地だったこの地域も、今はすっかり寂れている。公園の周りにも空き地が残っているのが現状だ。

 それを念頭に置くと、此処に置いていかれたのは夜以降。
 置いたのは母親か父親かそれとも両親か、それはわからない。けれど置いた人物は、此処ならば赤ん坊を置き去りにする瞬間を見られないだろうと踏んで赤ん坊を置いたのだろうか。


―――ひっそりと隠すように。


 それきり頭を横に振って考えるのを止めた。考えたって余計に虚しくなるだけだから。

 何故こんなことをしたのか。推測すらしたくなかった。
 どんな事情があったのかは知らない。
 ただ、何かやむにやまれぬ理由があったとしても、赤ん坊は置き去りにされ今私の腕の中にいる。

 それは揺るぎない事実で、とても悲しい現実なのだ。


「通報された方ですね?」

 救急車から降りてきた救急隊員の問い掛けに小さく頷くと、救急隊員の腕に迎えられ赤ん坊は私の腕から離れていった。

 いなくなってしまえば、腕が軽くなり、吹き刺す風に体が震える。
 あんなに冷え切っていた体でもそこには確かに温もりがあった。
 あれは命の温もりなのだろうか。


 数分後、警察を名乗る初老の男性が私の前に現れた。男性の随分と硬い表情は、紛れもなく今の状況の所為だろう。
 今は眉間に皺が寄っているけれど、きっと笑ったら目尻の皺がより深く刻まれるんだろうな。男性の顔を見つめながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。


「お話しを伺っても?」

「はい……あの一つ聞いてもいいですか?」

 状況を説明しなければ、と開いた口は意志に反して質問を口にしていた。
 それは、救急車が病院へと向かう為に走り出したのを見てしまったからかもしれない。


「えぇ、どうぞ」

「あの子どうなるんですか?……病院に行って、それから……あの、その」

 言葉がうまく紡げない。
 たどたどしい物言いに、男性は怪訝な表情を見せている。仕方ないと思う。私だって、自分がどんなにおかしいことを言っているのか分かっている。

 でも

 でも

 でも

「もし、あの子の親が見つからなかったら」

 ゆっくりと息を飲む。なだらかに落ちていく熱いものを感じながら、私は言葉を続けた。


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