侍BOYS!!〜一番ヶ瀬高校剣道部〜No.1-5
「…ここはな、」
「『史上最低の弱小剣道部』って呼ばれているんだよ」
「「え?」」
男が言葉を紡ごうとした瞬間、よく通るバリトンが行く手を阻んだ。
柊は、男とほぼ同時に声のした方へと顔を向けると、立っていたのはいかにも『剣道部』といった感じがする2人目の男。
「…キャプテン…」
「良平、いつも部長って呼べと言ってるだろう」
『部長(キャプテン)』は少し眉を下げて柔らかく微笑んだ。
その姿がいやに神々しく見え、柊は思わず目を擦る。まるで、あの人の周りだけ後光が射しているかのように思えた。
「…って事なんだよ。わかったか?新入生。それでも入る気か?」
男、もとい良平が柊に向き返り、話を本筋へと戻す。
その間、部長は道場内へと進行し、良平と並ぶような形で柊と対峙した。
「え?新入生だったの?この子」
「えぇ?わかってて言ったんじゃないんすか?」
「知らなかったよー。てっきり冷やかしかと思ってた。もしかして入部希望?」
「一応はそんな感じっす」
「…うわー。言わなきゃ良かった…」
微笑みを称えていた部長の顔は見る見るうちに曇っていき、その顔を両手で覆い床に座り込んだ。
どうやら、だいぶショックだったらしい。
「あぁ…。今年は遂に入部者0かもなぁ…。同好会に格下げだ…」
「何言ってんすかキャプテン!!これからっすよ!!」
「良平、部長だろ、部長…」
座り込んでしまった部長の肩を2、3度叩き、良平が無駄に白い歯を惜し気もなく披露しながらにかっと笑うが、部長のテンションは下がったまま上昇しようとせず。
そんなコントのようなやり取りを見ていた柊は、
「いや、だから、俺入部したいんスけど…」
と、意を決して(?)2人のコントの中に身を投じた。
「…は?お前、今の会話聞いてなかったのか?」
「え?いえ、全部聞いてましたけど…」
「それじゃあお前…、普通入りたいと思わなくね?」
「いやだって、弱い事は知ってたし…、それに俺の座右の銘(?)は『底辺から頂点へ!!』なんで!」
「「…」」
瞳を輝かせながら、柊は当初の目的を口に出した。
2人は唖然とした表情で柊を見つめる。