想-white&black-I-6
「ん……っ、ふっ」
次第に深みを増していく口付けは惑う舌を絡め捕られ、しゃぶられる。
あまりにも深すぎて激しくて、息ができなくなりそうだった。
「麻斗さっ……、息、できな……っ」
切れ切れの息の中で訴えるが麻斗さんは離してくれない。
飢えた獣のように私を貪ろうとしているようにすら思えるほど、麻斗さんは求めてやまなかった。
このままでは取り返しのつかないところまで行ってしまうような気がして、思わず麻斗さんの胸を押し返した。
「花音……」
はっと我に返った表情で私を見つめる麻斗さんの顔が
隙間なく埋められていた身体の間が空いて、温もりが逃げてしまうのが何だか寂しく思う。
キスの余韻でぼうっとする頭を何とか整理しながらも麻斗さんとの距離を置いた。
「ごめんなさい、私……」
キスに応えながらそれ以上足を踏み入れることができない。
心の中に楓さんがまだ強く残りすぎているのだ。
目を合わせることができず、俯いていると小さく溜め息をつく声が聞こえてきた。
きっと麻斗さんはこんな私に呆れたことだろう。
逃げ出しておきながらいつまでも未練がましい想いを抱いているのだから。
だが麻斗さんは思いがけないほど優しい声で私を抱き締めてきた。
「ごめんな、花音。先走りすぎちまった」
「……え?」
広い胸に頬を押し付けられながら、頭の上で響く声に鼓動が速まる。
「ここまで我を忘れるつもりなかったんだけどな。マジでごめん」
本当に悪かったと思っているのか、謝罪の言葉を繰り返す麻斗さんが何だか頼りなさげで可愛く思えた。
「麻斗さん、もういいんです。謝らないで下さい」
「でも……」
「私は大丈夫ですから」
そう言って少し身体を離して麻斗さんを見上げながら、小さく笑みを浮かべて見せた。
彼にあまり自分を責めてほしくはない。
それにむしろ悪いのは私なのだから。
私の表情を見た麻斗さんは軽く目を瞠った後、深い溜め息をついた。
「ったく、こんなとこで二人っきりになるのがいけねえんだよな。外にでもでかけるか」
麻斗さんの提案に今度は私が目を見開く番だった。
外出禁止令を布いていたのは麻斗さん自身のはずなのに。