なにげない一日-6
気恥ずかしさがまだ残っている。
この気持ちを悟られないよう、玄関の前で深呼吸をした。
「ただいま」
いつも通り玄関に入っていく。
「おかえり。ご飯出来てるわよ」
違ったのは、おれのただいまに返事が返ってきたということ。
「食べるでしょ?」
「うん」
「あっ、それって…」
母がおれの手にある空っぽのコーヒーの缶に目を止める。
「ブラック」
少し持ち上げて見せた。
母は朝のやり取りを思い出したのか、またクスクス笑いながら
「早く着替えて降りてくるのよ、ボク」
と言い残しリビングへ消えていった。
その後は家族で談笑しながら夕食を食べ、何をするでも無く、ぼーっとテレビを見て、何だかいつもより眠くなるのが早かったので、自分の部屋へ行った。
昨日までの一日も、今日一日も何てことはない普通の日だったことには変わらない。
それならば、一日中笑っていた今日の方がいい。
おれは、昨日までの時間より5分遅く目覚ましを合わせて、短かく感じた一日を終了させることにした。
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