なにげない一日-4
放課後。
約束通り倉田と教室に残る。
「おっ、いたいた。えっと、これとこれ。こっちを上にして四十枚な。いや、すぐだってすぐ。出来たらおれの机の上置いといてくれりゃいいよ」
川野は勢いよく扉を開けて入ってきたと思ったら、二種類の紙の束をドンッドンッと机に置き、簡潔に説明し終えると、さっさと教室を後にした。
バスケ部の顧問だからきっと忙しいのだろう。
「おー、やるかー」
「おう」
「半分こな、半分こ。…はい」
「おい、どこら辺が半分こだよ。これ」
「バレたか!…はい」
「さて、やるか」
カチン、カチンと規則正しいホチキスの音が響く。
「なぁ、大貫って思ってたイメージと違うな」
「あ、そう」
「聞かないの?ねえ、聞かないの?」
「何を?」
「おれをどういう風に思ってたんだよ、って」
「別に」
「聞いてよ〜」
「…おれをどういう風に思ってたんだよ」
「根暗」
「やっぱな。だから聞かなかったんだよ」
「いや、怒るなよ。そう思ってるやつ多いぞ」
「あ、そ」
「そんなシケた返事すんなや、兄弟。おれが誤解を解いてやっから」
「いや、いい」
「そういうこと言うなよ〜!おれら友だろ?友ぉ〜」
気が付けば…。
二つのホチキスの音はどこかに消えてしまっていた。
資料作りが途中で中断してしまったこともあって、終わった頃には外は既に暗くなってしまっていた。
あれだけ喋ると喉も渇くようで、おれはグラウンドの脇にある自動販売機に足を向けた。
この自動販売機は家とは逆の方向にあるということで、倉田は先に帰ってしまった。
おれ自身、その理由のためあまり利用したことは無い。
ざっと見渡して緑茶の缶を押し掛けて、おれの指はそのまま静止した。
おれの目がブラックコーヒーを捉えてしまったのだ。
そして、何となく、緑茶のボタンに掛けられた指をずらし、コーヒーのボタンを押した。
取り出したところで、グラウンドにある人影に気付く。
あれは…。