ハニードリッパー10-2
リタはビールの缶を持ったまま、また眠っていた。
私はやっぱり合宿に参加して…
いろいろ辛い思いもしたけれど良かったと思う。
もし、来ていなかったらケイジとの…
彼らとの接し方が今でも分からないままだったに違いない。
知らなけりゃ知らないで、私ならどうとでもやっていけると思うけれど…
何て表現したらいいのか、いつまでも蚊帳の外にいたに違いない。
それで彼らの何が分かったのかというと何も分かっちゃいないけれど…
私はきっと彼らの世界を軽く見ていたに違いないのだ。
ただ好きな事をやっているだけで生産性とか、社会性を伴わない…
好きな事なら誰だって一生懸命やっていられるわよ。
きっと今でもそう考えていたに違いないのだ。
それが逆転の発想みたいに彼らの一番を目の当たりにできたからこそ、ケイジひとりの事にちゃんと向き合う事ができると確信している。
深夜になって帰宅した時はさすがに二人ともグッタリだった。
やっと帰って来たんだ。
二人の生活が密集した狭い部屋…
[ 何か作ろうか? ]
本当はうんざりだけど一応聞くだけきいてみた。
ベッドに倒れ込んだケイジは腕を頭の下に組んで天井を見つめながら
[ うん、そうだな…
やっぱりいらない ]
少しホッとした。
私は愛妻ぶってケイジの靴下とトレードマークの破けたジーンズを脱がせる。
何か言葉をかけようかと思ったけど、何も思い浮かばなかった。
そのかわりに濃いグレイのトランクスの少し膨らんだ部分をぱっくり口にくわえてみせた。
なぜかそうしたかったのだ。