脆弱-2
「あの、私、何も迷惑かけるつもりはないからね。」
「何言ってんだよ。」
彼女は悲しそうに笑った。
「私は何も望んでないから。私のことは好きにしていいから、だから…。」
そこで彼女は言葉を切った。
それに続く言葉は分かっていたが、分からない振りをした。
---私のことは好きにしていいから---
…何も、彼女にしたいことがないなんて。
自分で驚いた。
とても口には出来ない。
「悩ませて、ごめんな。」
俺は便利な模範解答を滑らかに生産して、細い肩を抱いた。
どこか虚ろな顔で俺の胸にもたれ掛かる彼女の髪が、さらさらと肌をくすぐる。
俺を愛し、尽くす、この女は可愛い。
しかし、どこかで終わりの予感がした。
そしてきっと、切り出すのは俺ではない。
いずれ彼女は悲しみを爆発させ、俺はそれをただ見ているだろう。
何も言わないでいる俺を、彼女は責めるのだろう。
そんな、予感。
彼女は顔を上げ、俺にキスをする。
一瞬、避けてしまいそうになる。
ごまかして彼女を抱きしめる俺は思い出していた。
"インスタントコーヒー、買って帰らなきゃな"