ハニードリッパー9-2
ドキドキする…
とってもドキドキする…
ドキドキついでに終始眠りこけてるリタの鼻をつまんでやろうかと真剣に考えた。
[ ついたわよ ]
ここへきて、リタにさらりと声をかけてみたが、彼女はしばらく外を見てまた眠ってしまった。
私はそれでもリタに[ 昨日はごめんね ]って言葉に一番近い言葉が言えたような気がして少し心が軽くなった。
特別なステージだったんだ。
だから静岡くんだりまでやって来たんだ。
トレーラーの横に大きく名前が書いてある有名ミュージシャンの車も停めてあった
白文字で[ Ser Dragon ]と書いてある黒塗りのワゴンが停まっているのを見つけた。
神奈川ナンバーだった。
どんな人たちなんだろう?
ケイジとリタがいたバンド…
ここは全く私の知らない世界。
いつしか私は無口になる。
楽屋は大きなテントだった。
くじ引きに行ってきたペンネさんが俺たちは4番目だと言った。
一番最初が一番良くて、その次は最後の方でプロのバンドが出演する合間だそうだ。
4番目はあまりよろしくない。
私はこんなとこよりフリマでも見てきたかったけど、ケイジのそばにいなきゃならないような気がした。
理由はないけど、なぜかそんな気がしたのだ。
ペンネさんは顔が広いのか楽屋のいろんな人たちと話していた。
後から起きて来たリタも同様…
相変わらず誰とでも抱き合っていた。
ペンネさんはスーツ姿の人たちといて、あれは[ aレコード ]の人だとケンちゃんが教えてくれた。
他のいくつかのバンドにも言える事だけど、今日のライブ次第でデビューの道も開けるんだそうだ。
スゴいじゃないっ!
あまり期待してないけど、もしそうなっても私は来年もここにいれるんだろうか?
ケイジは私をそばに置いてくれるだろうか?
どうしてもそんな事を考えてしまう。
そんな私はまた自分の出番がなくて、拗ねているのかも知れない。