なにげない一日-7
好きな映画を観ても、気を落ち着かせることは叶わなかった。
無理もない、今日の一戦で全ての決着がつくのだから。
約束の時間にシンヤは現れた。あの、伝説のキューを手に。
「待たせたな。行こうか」
彼の顔には、確固たる覚悟があった。この勝負、どうなろうと悔やむことはないという、覚悟が。
「まさか、お前とこんな形で戦うことになるとは思わなかったよ、シンヤ」
「俺もだよ。お前とは、もっと……」
ビリヤードテーブルについて、俺たちは最後にもう一度睨みあった。
この勝負に負けたほうは、この場で自ら命を断つ。その決意を、再度シンパシーとして感じあいながら。
「……また、お前とグラタン食べたかったよ」
「……お前にも、俺のおすすめのパスタ、食わせてやりたかったぜ」
そうして、俺たちの最後の会話は終わった。
キューが構えられ、撞かれた白玉は、俺たちの友情、未来、果ては命を象徴するように、テーブルの上を慣性に翻弄され、漂い始めるのだった。