青に染まる少女-8
この人は誰なんだろう。
私を助けてくれたんだろうか?
いろんなことが頭を回って、だけれど、その混乱の渦の真ん中で莉子の死という悲しみがぐんぐん膨らんでいた。
目頭が熱くなって、下を向く。
パタパタと涙がアスファルトに落ちた。
莉子……
「莉子ちゃんは大丈夫だよ」
頭上からの男の声に、ハッと顔を上げる。
どうして莉子のことを……?
涙の膜で覆われた瞳で、男を見上げる。
目が合うと、彼はニコリと笑った。
「じゃ、改めて。藍ちゃん、行こっか。ここじゃ、ちょっと恥ずかしいし」
彼が周りを見回して言ったので辺りを見ると、数人の人達が怪訝そうに私たちを見ている。
「藍ちゃん?」
返事をしない私を、彼が身をかがめて覗き込む。
「……は……い」
いろいろな考えが頭を回っていたのに、なぜか私は頷いていた。
誰だか分からないけれど。
助けてくれたのかも分からないけれど。
悪い人じゃない、ような気がする。
それに、この人は莉子のことを知ってる。
莉子は大丈夫だと言った。
何が大丈夫なのかは分からないけれど、分からないなら行ってみなきゃと思った。
「よし、おいで」
男が差し出した手を、私はためらうことなく握った。
温かい手。
私の右手には、捨てるはずだったチラシが握られていた。