青に染まる少女-2
「……」
莉子は答えない。
弁当箱とペットボトルをランチバックにしまうと、席を立った。
静まり返った教室をゆっくりとした足取りで出口へ向かう。
視線は定まらず、どこを見ているのか分からなかったが、足取りは確かなものだった。
「莉子?」
呼び掛けても振り向かない。
千奈美が追いかけようと立ち上がった。
「ほっときなさいよ!」
昭奈が三度(みたび)、声を荒げる。
「でも……」
迷うように呟いた千奈美と目が合った。
どうしよう。
その気持ちは3人とも同じである。
私は莉子の席に目をやった。
鞄は置いたまま。
次の授業までは20分ある。
そのうち戻って来るかもしれない。
自分に言い聞かせるように小さく頷くと、それを見ていたらしい千奈美も席に着いた。
完全にざわめきを取り戻した教室で、私たち3人だけはお通夜のような静けさで昼食を終えた。
授業開始まで後5分。
莉子はその日、教室に戻っては来なかった。