青に染まる少女-13
「はぁ……」
気の抜けたような返事をして、汗をかいた紙コップを握ると、彼はトレーを引き抜いて組んだ自分の膝に載せた。
「あまっ……」
ストローを口に含んで中身を啜り、思わず呟く。
Mサイズの紙コップの中身はキャラメル味の甘いコーヒーで、上には生クリームまで載っていた。
「苦いより飲みやすいだろ?」
隣で志臣が言い訳のように呟く。
好みが分からなかったから、とりあえず甘い物にしたのだろう。
コーヒーショップの前でどれにしようか迷う彼の姿を思い浮かべると、少しだけおかしかった。
甘い飲み物をもう一口啜ると、志臣が小さく咳払いをした。
「あんたには今日からうちの事務所で生活してもらう」
「どういう……こと?」
本題に入ったのだと察し、隣を見ると、志臣はどこか遠くを睨みながらストローを噛み潰していた。
「石田莉子は死んじゃいない」
「え……?」
「見つかった死体は擬体だ。本物はまだ生きてる」
……莉子が、生きてる?
動悸が激しくなるのを感じた。
莉子が……生きてる……
ホントに……?
「ホント……に……?」
心の中で渦巻いた疑問を震える唇に乗せる。
「本当だ」
志臣の力強い言葉に涙が溢れた。
莉子が、生きてるんだ……。
名前しか知らない志臣の言葉は、なぜか信用できた。