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『Summer Night's Dream』
【青春 恋愛小説】

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『Summer Night's Dream』その3-4

「予知夢だな、それは」


水嶋は話を聞くなりあっさりとそう言った。
机を挟んで陽介と、ウチの制服に身を包んださくらが向かい合う彼の話に耳を傾けている。
水嶋は焼きそばパンをかじり、コーヒーを飲み干してから二つ目のサンドイッチに手を伸ばした。カビ臭い部室で、よくこんなに物が食えるな、と陽介は辟易していた。

今朝、登校してくるとクラスの席に孝文の姿はなかった。
またいつものサボりだろうと決め付け、昼休みに一緒に落ち合うことになっていたさくらとの約束はどうしたものかと思ったが、孝文が消えて困ることなど一つもなかったので別に問題はなかった。


「ところで君たちは……」


サンドイッチを口いっぱいに頬張って、水嶋が、


「ジュセリーノ・ダ・ルースを知っているか?」


知りません、何ですかそれは。


「ブラジルの有名な予知能力者だ。彼は九歳の頃から夢の中で、彼が「助言者」と呼ぶ存在から言葉や映像を受け取り、それを予言として残していたそうだ」


常識だぞ、と水嶋は居丈高に説明した。
つまり予知夢や正夢というものは、これから起きること、もしくは起きるかもしれないことを事前に夢として見るんだそうな。人によってはそれははっきりとしたカラーで鮮明に見えたり、抽象的なイメージとして覚えていたりと症状は様々らしい。さくらの見るという夢の連続性は、そこで何かが起こる前兆なのかもしれないと、水嶋は言った。


「さくら君。夢の内容について詳しく教えてくれ」


「はい、えーと……」


さくらは額に指を当てて思巡すると、


「まず、私が見たのはさっきも言いましたけど、この学校の資料室です」


「君はそこに、一人でいたの?」


「うん、そうよ。だけど声がしたの。か細い震えるような声で「探せ」って言ってた。私の中から聞こえてくるようで怖かったけど、何度も言われているうちに自然と体が動いていたの。部屋中を探し回ったけど見つからなかった」


「探し物って?」


「さあ」


とさくらは困った顔をした。


「じゃあ君は、なにを探すのかも分からないのに歩き回っていたのか?」


こくん、と彼女が頷いて陽介を呆れさせた。なぜそんな無意味なことをするのだ。答えの出ない問いを解かされてるのと同じじゃないか。


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