『Summer Night's Dream』その3-3
「ところで」
とさくらが切り出し、
「あなた達は一体何をしてたの?」
陽介と孝文が顔を見合わせる。当初の目的は記事のネタ探しで、校内を回る予定だったのだ。
さくらと会わなければ今頃何か面白い写真の一つや二つは撮れていたかもしれない。
どうする、と陽介は孝文に目配せした。
「決まってんだろ」
孝文はそう言った。
「困ってる女の子をほっとけるわけねーじゃねーか」
なんだ、お前。やけに男前じゃないか。だが、鼻の下を伸ばしたまま喋るのはやめた方がいいぞ。
まあ、気持ちは分からなくもないが。確かに陽介にしてもさくらの力になってやりたいという思いはある。しかし実際問題何をどうすればいいのか……。
エスパーでもカウンセラーでもない陽介達には見当もつかないのだ。
下心丸出しで協力を申し出てしまったコイツに、何か考えがあるというのだろうか。
あるようには見えない。
そんなことをつついてやったら、孝文は、
「まあ、俺だってよ、何のアテもなしに適当なこと言ってる訳じゃねえしよ。それを言ったらお前だって人の事言えねーじゃねーか。幽霊なんて出るかどうか怪しいもんに大博打かけやがって。毎回引きずり回される俺の身になってみろ。だいたいお前は……」
早く言え。
「…つまり、ウチの部長なら、何か知ってんじゃねーの?」
ああ、なるほどね。
餅は餅屋というわけだ。『超研』に入ってる手前言いにくいのだが、オカルトや心霊学に対して陽介はほぼ素人に近い。Xファイルや超常現象の年末特番なんかはよく観るという程度だ。孝文にいたっては、何の因果でこんな所にいるのか分からないほどのビビりである。
「部長かぁ……」
「そう、部長」
微妙なニュアンスで陽介が呟き、孝文がそれに倣った。
確かに頼みの綱はもう部長しかいないのだけど、何だろう、この釈然としない感じ。
このもやもやした感じ。
「結局、俺らってさ……」
「ん?」
「最後は他力本願だよな」
言うな、そういう事を。