隣にキミが。。。-1
お嬢様学校にはおよそ不釣り合いな紫に赤のメッシュ頭。校則違反の化粧、制服、アクセサリー。たったそれだけのことで、それだけじゃないかもしれないけど、周りの人間はあたしを「不良」と呼ぶ。
悪いけど、あたしだって中２までは全然できた子だったんだよ？中２の時、すんごいムカツク体育教師がいて。むちゃくちゃにスパルタで、みんなからは陰で「ＳＴ」って呼ばれてた。Ｓａｄ Ｔｅａｃｈｅｒ。そいつが、あたしの友達の胸さわったんだ。明らかにわざと。腹立って、あたしともう１人、あたしと仲良かった男子で、ＳＴのこと殴り飛ばしてやった。ふざけんな、お前に教師やる資格はないって。―――その日の夜、学校から家に電話が来て。あたしと友達の男子はすっごく怒られた。でも、正しいことをしたんだって、全然気にしてなんかなかった。
問題は、その次の日。普通どおり登校したら、教室の黒板に大きく「教師に暴力を振るう最低生徒！！」って書かれてて。助けてあげた友達も、面倒はごめんって顔して、あたしのこと見ようともしなかった。それであたしは周りの人間が信じられなくなって、今に至る。
「ねぇ〜むぅ〜いぃ〜・・・」
誰に言ったわけでもなく、そうぼやく。本当に、天気のいい日に学校に行くことほどあほらしいことはない。さぼろっかな〜・・・。
なんて考えてると、軽く頭をどつかれた。こんなあたしの頭をどついてくるやつなんて、この世にたった１人しかいない。
「う〜っす、紫頭。まぁた学校サボる気か？」
「頭まっ金金の奴に紫頭なんて言われたかないわよ。それに、今日超〜天気いいしさぁ。こんなんで数学とかきいても、絶対頭入んないって。」
「物は言い様だな。いっつも聞く気ねぇくせに」
腹立つ。腹立つけど、それ以上に・・・嬉しい。
あ、紹介が遅れましたね。あたし、安西陸。そしてあたしと親しげに話してるこいつは、村岡峻。さっき話した、あたしと一緒に「不良化」した男子であり、幼なじみであり、家もお隣であり、ついでにあたしの好きな人。今高２だから、もう４年越しの片思い、ってことか・・・。
「あたし、やっぱ今日サボるわ。やる気しないし。んじゃそーいうわけだから、峻はがんばってお勉強してきてよ。じゃ〜ね・・・」
１人で勝手に歩き出そうとしたとき、不意に腕を捕まれた。その瞬間、心臓がトランポリンのようにはね回る。が、気づかれると困るので、あたしは平然を保って言った。
「・・・何か？」
「お前、俺だけ学校行けってばひどくない？俺、お前いないとあそこで話す相手いね〜んだけど」
「峻さんはモテますから、女の子たちが放っておきませんわよ〜おほほ〜」
もちろん冗談だけど、峻が密かに女子に人気があるのは本当だ。顔は良いし、運動もできるし、頭も実は良かったりする。髪の色がこんなんじゃなかったら、たぶん人だかりで近づくことすらできないんだろうなぁ、あたし・・・。
「・・・オメー、俺が誰でも良い男だって、そう思ってんの？」
「ほぇ？」
いきなりワケわかんない質問されて、あたしもついついワケわかんない返答をしてしまう。全く理解不能で振り向いた直後―――
ちゅっ。。。
「・・・！なっ！！」
「俺、結構前から陸のこと・・・」
心臓飛び出そうだよ〜・・・。でも、その前に。ふと気づくと、周りの目線がみんなこっちを向いている。あたしは峻の言葉を最後まで聞かずに、思いっきり峻を突き放した。あろうことか・・・。