Heaven knows.-7
「シュリ様シュリ様ー」
「お飲みくださいましー」
――あれから幾ら程時間が経ったのだろうか。
「……いらない」
どんどん杯に甘い香りの液体を注ぐこども達に、最初は勧められるままに飲んでいた。それは酒ではない、という言葉を信じていたからなのだけれど。
「これ、本当にお酒じゃないの?」
口に入れる度に体が熱く、飲み下す毎に湧き上がる焦燥感。
――こんな甘美な飲み物を、私は知らない。
「シュリ、こちらへ」
クスリ、と笑みを浮かべた美麗な男に呼ばれ、私は抗う事無く呼ばれた場所へと腰を下ろす。それに満足気に微笑むと、私の肩を抱いて唇を重ねた。
名前を教えてしまった私が「帰れない」、とわかったのはこの豪奢な部屋を飛び出そうとした時だった。
「あ……っ!?」
うそ、あり得ない――!!
「どうして、……扉が無いの」
恐る恐る振り返った私の目には、煌びやかな姿の男の美麗な微笑みがハッキリと焼き付いた。
「こちらへお戻りくださいー」
「シュリ様はミモリ様のお傍へー」
カクカクと膝が笑ってる。
立っているのもやっとのことで。
「あり、えない……」
呟いた私を、小さなこども達がスカートを引っ張って必死に引き留めていたのだから。
「さあ、我の杯を」
そう言って、私に飲み物を注ぐこども達を止めて自ら甘美な飲み物を注ぎ入れた「ミモリ」。
香りがさっきより強い気がして、注がれた液体と「ミモリ」とを交互に見た。
「どうした」
笑みを浮かべた「ミモリ」は人知を越えた、と言っても過言ではないほどの美しさ。作り物の様で、作り物でない、煌びやかな姿。
リアルには日本人しか知らない私が日本人以外と比べることは出来ないけれど、私はこんなに美しい姿をした人を見た事が無かった。
「あなたは、人じゃないのね?」
美し過ぎる「ミモリ」にも、二人のこども達にも、この密室になった空間にも――…全てに現実的な要素が感じられなくて、私は杯に注がれた液体を見つめ、そこに映る自分の顔を見ながらポツリと呟いた。
「ミモリ様はお社の主人さまでございますー」
「ミモリ様はお社の主人さまでございますー」
すると私の左右から、覗き込むようにして「エン」と「シャク」がそう言った。