Heaven knows.-5
あたたかな温もり……に、私は包まれていた。
「……ん」
目が覚めた私の網膜が捉えたものは、金箔張りの豪奢な格天井(ごうてんじょう)。自宅にそんな華々しい部屋なんか無い。
「……ど、こ!?」
ガバッと起き上がろうとしたんだけれど、起き上がる前にすぐ傍であの透き通った声がして、それは適わなかった。
「目が覚めたか、我が姫。我の前で倒れてしまうとは……喜びも一入(ひとしお)だったのだろうな」
クスクスと、まるで幼子をあやすように私の頭を撫でている、煌びやかで美麗な男。……温もりの正体。
私はその男――「ミモリ」の膝に横抱きにして乗せられていて、すぐ傍にはさっきのこども達が座っていて私の方へ扇子の様な物でゆるりと風を送っていた。
「お目覚めですかー」
「お目覚めですかー」
目の開いた私を見るなり二人のこども達はパッと花が開いた様な笑顔を浮かべ、扇子を置いてキャッキャと笑い始めた。
「エン、手拭きを。シャク、飲み物を」
「かしこまりましたー」
「直ぐにお持ちしますー」
今の状況に付いていけず……というよりも理解出来ず、ただ狼狽える事しか出来ない私をそっちのけで二人のこども達「エン」と「シャク」は「ミモリ」の指示どおりにパタパタと働き始め、あっという間に私の前にはお手拭きと飲み物が運ばれてきた。
「……」
「一口でも飲むといい、落ち着くはずだ」
どうぞー、と差し出された漆塗りの杯を見つめるだけで中々手を出さない私を見て小さくため息を吐いた「ミモリ」が代わりに杯を手に取る。
「ほら」
ぐい、と勧められた杯からは甘い香りがした――。