Heaven knows.-10
「――……り、珠理っ」
「……ん…」
目を閉じていても眩しくて、体を揺さぶられる違和感に薄く目を開けると、
「珠理ぃ!!」
「よかったぁ、ビックリしたよっ」
アヤちゃん達が心配そうな面持ちで私を囲んで覗き込んでいた。
「あ、あれっ?私……」
キョロキョロと辺りを見回してもそこにはアヤちゃん達がいるだけで――…「ミモリ」も、「エン」も「シャク」も。さっきまでの空間すら存在していなかった。
「珠理、急にふらついて倒れちゃうからビックリしたよっ!」
口々に安心を告げる4人に、私はポカンとしていた。
私は一体どのくらい倒れていたの?
焼け付くように熱かった体に、むせそうなほどの甘い香り。
それは一瞬の事では無かったはずで。
「社は……?」
「あれはもういいよ、教室帰ろうっ」
「……中は、」
「見てない。けど、もう帰ろう?」
珠理がぶっ倒れちゃったから怖くなったしっ! と苦笑しながら私を支えて起こす。
「……ミモリ」
私の呟きは山の木々が風を受けて揺すれた事で掻き消され、4人の誰にも聞こえる事はなかった。