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官能の城
【女性向け 官能小説】

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官能の城(3)-1

(13)


その頃城の中でリチャードの教育係のマークスは頭を抱えていました。
あの仮面舞踏会が催された次の日に、
リチャードがいないことに気が付いたのです。


マークス自身はいつもあの催しを苦々しく思っていたのです。
四十歳になるこの男は根が真面目で、
この国の幾多の戦争で腕を振るい、目覚ましい活躍をしてきた彼にとって、
この今の退廃した現状を見るに耐え難いのでした。

けっして彼は堅物ではありませんが、
やはりこの国を思うとき、彼の崇高な精神は
一緒に闘って戦果を挙げた同僚さえも、
退廃したこの世界に落ちぶれていくのを見るのには耐え難いものがあるのです。


その最たるものがクリスでした、
彼はマークスと同じように闘ってきた勇敢な戦士でした。

クリスはマークスより5歳若いのですが、
その甘いマスクとテクニックを利用して幾多の女性を手なずけ弄び、
今は、王妃さえも彼の手中で泳がせているようなのです。


彼のその野望をマークスは薄々感じているだけに、
いつも憂いていたのです。

かっては仲の良かった時期もありましたが、
王の勢力が衰退し始める頃から
クリスは性格が変わったように野心を剥き出しにするようになってきたのです。

そしていつのまにか
この王国の中にリチャード王子を擁護するマークス派と、
王妃のマーガレットを彼の思いのままにする
クリス派が対峙していたのです。


しかしそれは王が君臨している間は表面化することはありませんが、
裏の世界では色々な駆け引きが渦巻いているのです。

ですから、
このような情勢の中でリチャードが城を抜け出したとなると、
彼を王とするマークスにとっては将に一大事なのです。


リチャードからの手紙を受け取ったマークスは驚き慌てましたが、
ここで狼狽し王子の失踪が表面化すると
大変なことになると考えた彼はそれを伏せ、
王子が軽い病気になったというように繕い、
その間に王子を連れ戻すということを考えたのです。


それには彼の息子で17歳の王子よりも3歳上の
メルシーに内密に連れ戻すことを命じたのです。

メルシーは剣客家のマークスの息子だけあって、
若いけれど小さい頃から父の様々な武術を伝授されていたので、
彼に叶う者はそれほどはいない剣客でもあるのです。


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